過去拍手

□クリスマス
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 年の瀬を迎えて、街は賑やかさをましている。

「なんか、最近12月っつーと、妙にキラキラしてねぇか?」

 市内巡回に出たエドワードは一緒にまわるシロア曹長に問いかけた。

「そうですね…なんでもどこかの国の物語にでてくるクリスマスとかいうイベントを真似るのが流行ってるらしいですよ」
「ふーん、なんだそりゃ」
「寒い時期ですから、賑やかに街を飾ると暖かいじゃないですか〜。そういう感じですかね?」

 そんなもんかなぁと、店のショーウインドウを眺めながら街の様子を観察する。

「クリスマスには恋人どうしでプレゼントを渡しあったり、まぁ、なんていうか、睦みあうとか///、都合のいいイベントらしいですよ。オレ恋人いないんで関係ないですけど」

 シロアは笑いながら説明をしてくれた。エドワードも笑いながら相槌を打って、それでも街中に目を配ることを忘れない。

「中佐さん、こんにちは。寒いのに巡回かい?」
「お、おばちゃん、こんちは!どう?なんか変わったこととか無かったか?」

 顔見知りの花屋のおばちゃんがエドワードに声をかけたので気さくに世間話がてら街の様子を聞いてみる。エドワードは街の人々にも人気があるようで、巡回にでるとたいていみんなが声をかけてくる。

「最近はすっかり治安も良くなって、年末でも静かなもんさ。平和だよ〜。軍がしっかりしてるから、かねえ?」

 おばちゃん流のお世辞ではあったが、エドワードは嬉しかった。みんなが軍人を嫌わないでくれるのは嬉しい限りだ。

「そうだ、中佐さん、あんたにこれあげるよ。クリスマスプレゼントさ」

 そういうと大きな花束を一つ、どんと腕の中に押しつけられてしまった。

「予約のお客が、ダメになっちまってね。戻すのも面倒だし、中佐さんならかわいいから、花も喜ぶよ」

 かわいい、というところに、反応したのをシロアは見逃さなかったが、本当にそうだな、と思う。

 花を両手いっぱいに抱えて司令部に戻るとそれはもう大変な反響だった。

「エルリック中佐が誰かにプロポーズするらしい」
「いやいや、誰かにプロポーズされたんだそうだ」

 噂は噂をよび、その噂はマスタング少将がプロポーズして、年内にも結婚するという形でなぜか落ち着いてしまった。

 そんな噂を耳にしたアルフォンスは心中穏やかではいられるはずもない。

 



 アルフォンスは独りきりの帰り道ずっと考えていた。あの花束は外回りで花屋のおばちゃんに貰ったのだと、納得はしていても、あんな噂がたつのは腹立たしい。火のないところに煙はたたない…だから少将が本当に兄さんを狙っているのかもしれないし、または兄さんがそれらしい素振りをみせたのかもしれない。
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