過去拍手
□おかえり
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「ただいま〜」
ほぼ定時で帰宅してきた兄さんは、今日非番だった僕が待つ二人の家へ超ゴキゲンで飛び込んできた。
「んあっ、今日はシチューだしぃ」
そのままキッチンへ直行し、鼻をクンクンさせながら僕の手元を覗き込む。子犬かっ!!
「外、寒かったでしょ? こんな日はシチューだ、と思ってさ。…嫌だった?」
「な、わけねーだろ」
僕だってわかってて言ってるよ、もちろん。
「はい、手洗ってうがいして。」
兄さんは名残惜しそうにシチューの鍋に目をやりながら、しぶしぶ洗面所へと向かった。そして軽く手洗いうがいを済ませると、着替えもせずにそのままソファーへと突っ伏した。
「うあーっ、定時で帰るためにも頑張ったんだぞ! もうヘロヘロだぁ」
「でも、軍服ぐらい脱いでよね。だいたい皺になるだろ。ほら」
僕はシチューの火を止めて兄さんの世話をやく。ああ、もうちょっとで出来上がりだっていうのに、なんでこの人はこんなに世話を焼かせるんだ、まったく。
「へいへい。脱ぎゃいいんだろー、脱ぎゃあ。」
「わかってんなら、世話やかすな。」
これで国軍の中佐だもの。それも仕事上ではめちゃめちゃカッコいい。こういうギャップに弱いんだよね、人間って。
「っていうか・・・脱がせて」
うわっ、なんという瞳でそういう台詞吐くかなぁ。・・・ごめん、僕も弱い一人だった。シチューはまた後で煮込むことにするよ。もう、どうなっても知らないからね。