過去拍手

□おんぶ
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 今日は久しぶりに揃って定時に帰れる予定だ。いったい何日ぶりだろう、僕は朝から浮き足立っていた。
 兄さんの書類を手伝って、残業なんて絶対にさせないようにしなきゃ。自分にだって仕事はあるから時間内いっぱい働いても仕事が残りかねない状況にもかかわらず、兄さんと一緒に帰るためなら超人的な力を発揮する(といわれている)のだ。

 とはいっても、昔はやんちゃだった兄さんも今ではそんな姿もなりをひそめて、すっかりかっこいい国軍中佐になっている。確かに書類は滞ることがたまにはあるが、あの無能上司に似ることなく、スマートに職務をこなしているようだ。それだけに妙な人気がでて、変なやからがまわりをうろつくようになってしまって虫退治が大変になってしまった。やっぱり僕も軍に入って正解だったよ。兄さんは呑気なもので、全く意に介していないみたいだし。


 おっと、そんな独白をくりひろげているうちに、終業の鐘がなってしまった。すぐに迎えに行ってもきっと準備ができていないだろう。せっかちだと思われるのは得策ではないので、ここは一つ、大人の余裕というやつをみせるべきだろう。

 とりあえず15分ほど待ってみよう。兄さんが仕事を終えていれば自分から出てくるかもしれないし、そしたら誉めてあげて機嫌よく帰り道に買い物とか、運がよければそのまま外食してデート、なんてのもアリかもしれない。

 ニヤニヤしながら自分のデスクで帰り支度をしていると、隊のみんなも帰り支度を済ませて各々帰宅を始めた。兄さんはまだかなぁ。そろそろ良い頃合いだろうか。

 はやる気持ちをおさえつつ、さも何事もなかったように執務室の扉を開けた。




……いない…。
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