Chocolate Candy

Trick or Treat!
1ページ/2ページ


カーテンを勢い良く開けると
朝日が眩しいまでに差し込む。
空は爽やかな秋晴れ。
窓を思いっきり開け放して
朝の空気を胸いっぱいに吸う。

今日は特に予定もない。

何も予定のない土曜日って
なんだかとっても贅沢な気分。

大きく伸びながら、
今日は何をしようかななんて
ぼんやりと考えていると
こんこんこんと乾いた扉の音。

時計を見るとまだ
ブランチには少し早い。
どうかしたのかな、と
思いながらも返事をすると、
返ってきたのは
弾むような明るい声。


「おっはよー!」

「ユウジお兄ちゃん?」


声はすれどもなかなか
扉が開く様子はない。
どうしたんだろう。
いつもはノックを忘れて
来ることも多いのに……。

そんなことを考えながら
扉を開けるといつもの
きらきら向日葵笑顔。

ただいつもと違うのは……


「……その格好……」

「ねえねえ似合う?」


ご機嫌な様子でくるりと一回転
してみせるユウジお兄ちゃん。
確かにその服、というより
衣装は彼に似合っている。
似合っている、けれども……


「……急にどう、したの?」


状況が掴めずただ呆然と
ユウジお兄ちゃんを見つめる
私に彼はあっと声を上げた。


「そうだ、うっかり言うの忘れちゃってたね!」

「? なにが?」


きょとんとする私に
ユウジお兄ちゃんは悪戯っぽく
にこり、と微笑んだ。


「トリック オア トリート!」


そう言っておもちゃの剣を
かざすユウジお兄ちゃん。

そこでやっとわかった。
今日はハロウィン。
いかにもユウジお兄ちゃんが
好きそうなイベントだ。


「あ、お菓子、渡すんだよね? えーと、」


ごそごそとポケットを探るも
もちろん着替えたての服に
お菓子なんて入っている
はずもなくて宙を掴むばかり。

突然の出来事に慌てていると
ユウジお兄ちゃんは
そんな私の手を取って
ふわりと微笑んだ。


「残念でした。時間切れ!」

「ええええっ?」

「お菓子くれないなら、悪戯しちゃうぞ?」


そういって未だあわあわする
私にユウジお兄ちゃんは少し
悪戯っぽく微笑んで私の唇に
軽く掠めるようなキスをした。


「……お菓子くれないと、もっと悪戯しちゃうぞ?」


赤面してただただ彼を
見上げるばかりの私にそう
そっと囁いてばたん、と
部屋の扉が閉じた。


Trick or Treat!
(君にあまいイタズラ)




→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ