Chocolate Candy

□君とティータイム
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純白の甘さ控えめ
生クリームを引き立て役に

ちょっぴりほろ苦くて
しっとりあまぁい
ガトーショコラ。


さくさくタルト生地に
ふんわり甘い
カスタードクリームを
たっぷりと。

きらきら苺やオレンジたちが
誇らしげに乗った
宝石箱みたいな
フルーツタルト。


ころりとした
まぁるいフォルムに

女の子の大好きな
パステルカラーをのせて

似合いの甘酸っぱい
ジャムを間に挟んだ
小さなマカロン!


ティータイムを幾度過ごせど
この甘い芸術品たちに
見慣れる事なんてなくって

毎回毎回、味覚も視覚も
魅了されてしまうんだ。



「……本当に幸せそうに食べるよね」



ガトーショコラを
ぱくりと一口、口に運ぶと
雅季くんが呆れたように呟いた。



「だって美味しいんだもん」



西園寺家のパティシエさんは
本当にすごい人だと思う。

ティータイムやデザートに
出されるスイーツは全て
見た瞬間、思わずときめく
くらいに可愛くって
蕩けてしまいそうになる
くらいに美味しいのだ。

だから気をつけていないと
ついつい食べ過ぎてしまって
大変なのだけれども。



「そんな甘いものばっかり、よく食べれるね」



ふと見ると彼の前には
ティーカップがぽつりと
置かれているだけだった。



「だって好きだもん。……雅季くんこそ、こんな美味しいものをよく食べれないでいられるよね」

「……甘いものはあまり好きじゃないからね」



そういって雅季くんは
ティーカップの中の
紅茶をゆっくりと啜る。

(きっと彼のティーカップの
中の紅茶も砂糖なんて一つも
入っちゃいないんだろう)


近頃は甘男とかいって、
スイーツ好きな男の人も
増えてきているようだけれども
彼には当てはまらないようだ。


別に嫌いなものを
無理に食べる必要は
ないけれども

でもやっぱりこの美味しさを
共有できないのは
ちょっぴりだけ寂しいと
思ってしまう。



(なんて、わがままだけれどもね)



そんなことを考えながら、
ガトーショコラをもう一口
口に入れると

チョコレートの甘さが
口の中でやんわり
広がって、溶けた。



「……こんなに美味しいのになぁ」



独り言のように呟くと
フォークを置く。
(皿の上はもう空っぽだ)


かたん


ふと聞こえた物音に
顔を上げると、
すぐ目の前に雅季くんの顔。



「雅季くん……?」



返事の代わりに
返ってきたのは彼の唇で。

唐突に重ねられたそれは、

そして長いキスの後、
軽いリップ音と共に離れた。



「甘……」

「……当たり前でしょ。ガトーショコラ食べた直後なんだから」



唐突なキスに赤らんだ顔を
見せまいと
拗ねたように顔を背けて、
フォークを手で弄ぶ。

すると頭上から、
ふっ、彼の口元が緩む音が
聞こえた。



「……じゃなくて、君が」

「え?」

「君とのキスはいつだって甘い」



だから、僕のスイーツは君で十分、と
今度は額にキスが落ちた。


Chocolate Kiss!
(チョコよりも甘いキスをしよう)




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