Chocolate Candy

いちご色ロジック
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「……あれ?」

きめが細かくて
綺麗な彼の肌。

その辺の女の子なんかより
ずっとすべらかで

その癖、何も
特別な手入れはしていないと
いうのだから。

羨ましくて堪らないと
常々思っていたその肌に

見つけた
ひとつの違和感。


「……にきび?」

「…ん? ああ、うん。そうみたい。
……こんなの初めてできた…」



瞬くんはその異物が
気になって仕方ないのか
顎にあるそれに手をやった。

その仕草は
少し不機嫌そうであり、
少し戸惑ったようでもある。



「駄目だよ、瞬くん。触るとばいきんが入って、悪化しちゃう」

「……そうなの?」


私の言葉に瞬くんは
かくり、と小首を傾げ、
顎を弄る手を引っ込めた。

しかし一度見つけてしまうと
気になって弄りたくなってしまうのが
にきびとかかさぶたとかと
いったものの憎いところ。

瞬くんもそれは同じらしく
彼の手はそわそわと
落ち着かない。

その様子がなんだか
少し可愛らしくって
くすり、と口元から
笑みが漏れた。


「あ、そうだ。私、お薬あるから塗ってあげるよ」

「……本当?」


ポーチから取り出した
薬を手に取って、
瞬くんに向き合う。


「瞬くん、想われにきびじゃない?」


そっと指に掬った薬を
患部に塗る。


「……想われにきび?」


少ししみるのか、
顔を少し顰めて、
瞬くんは問い返した。


「聞いたことない? 顎ににきびができると誰かに想われてるってことなんだって」


終わったよ、と
薬を片していると

じい、と瞬くんの
視線を感じた。


「……? 瞬くんどうしたの?」

「……おかしいよ」


私を見つめる目はそのままに
ぽつり、瞬くんは呟く。


「なにが?」


瞬くんの言葉の意図が
わからなくって

かくり、首を傾げると

瞬くんの手が私の顎に触れた。


「だって、……僕はお姉ちゃんを想ってるのに、お姉ちゃんはにきびがないから…」


だから絶対それはおかしいよ、と
真剣な顔をして
瞬くんが言うものだから

私は思わず赤顔してしまった。


君のにきびと僕の動揺
(にきびも根拠もいちご色!)




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