協奏曲
□強敵の着ぐるみ
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少年、ヘッポコ丸は平常心を保つ為に必死だった。強さを求める彼にとって、この鼓動は最大の強敵。
初めて逢った時から、見掛ける度、逢う度、一緒に過ごす度、この気持ちは常に更なる強敵に成長していく。
初めて逢った時から、見掛ける度、逢う度、一緒に過ごす度、君に魅了されるが故に。乗り越えられない強敵になっていく。
強さを求める彼にとって、この感情を憧れである仲間に知られる事は避けたかった。
なのに、ビュティと買い物と云うだけでこのざま。1人、2人は同伴者で着いてくるだろう誰かに確実にバレてしまう。
新鮮な空気を深呼吸。
何回かを繰り返し、漸く平常心の五歩手前までこれた。バクバクしていたさっきよりは大分マシになった。
「へっくん!」
土器ぃぃっ!!
「待たしちゃってごめんね」
しかし走ってきた彼女にさっきまでの平常心五歩手前は一瞬で消え去った。またもや溢れんばかりに脈打つ鼓動に、強敵の手強さを思い知らされる。
「い、いやっ、気にしないでっ」
「ありがとう、じゃあ行こっか」
笑う姿は天使みたいだ。いや、本物の天使なんて見た事はないけれど、本物でさえ敵わないと思える。
「……あれ?」
「どうしたの、へっくん」
「他の人は?」
「皆用事があるんだって。だからへっくんが一緒に着いてきてくれて良かった」
「そ、そうなんだ」
例え買い物へ行く街があまり離れていないとは云え、ビュティを1人きりにするなんてもっての他。着いていくと決めた判断を自賛しつつビュティの隣を歩めば。
大事な事に気付いた。
「え、じゃあ…」
「うん。へっくんが居なかったら1人で行かなきゃいけないかと思って不安だったの」
「びゅ、ビュティさんと2人…?」
「へっくん?」
ぼんっ。
「わっ、ぇええ?!」
気が付けば弥生土器を持っていた。一瞬で作れない筈の弥生土器を作ってしまうとは。
これは、ヤバいんじゃないか、オレ。
ものすごく。
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