協奏曲
□無力な者は孤高を知らず
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「…ただいま」
「お帰りっ、クラウ…ド……?」
あなたが笑ってくれるから、私も笑顔を浮かべるの。
「…悪い…。ちょっと失敗したんだ」
腕を這う深紅の液体。
白は儚く紅に染まり、紅は尚も白を侵食していく。
無力な人………。
私は無力だ……。
「応急処置はしたし、大した事はないんだっ。見た目ほど、酷くはないから……」
触れた彼の温もりは心地よく。
優しい温もりに涙が溢れた。
「ごめん…、ごめんね…。私、何も出来なくて……そのっ、ごめんなさい…」
せめて、少しでも力が有れば良かったのに…。
力が有れば待つだけのもどかしさなんて知らずに済んだのに…。
凍てつく想い。
動かない躯。
「ごめんなさい…」
「謝らなくていい…」
温もりと鼓動。
伝う涙がもどかしい。
「…何もしてないなんて嘘は付くな」
「え…?」
「『いってらっしゃい』って、笑ってくれるだろ。『お帰り、クラウド』って、笑ってくれるだろ。それが俺の帰る理由なんだ」
ふわり、香るクラウドの香りに交じる鉄錆…。
「俺の為に流す涙が、悲しいけど嬉しくて…。怪我をしたら懸命に心配する姿が可愛くて…」
大きな手、
撫でられる感触は大好き。
「何も出来ないなんて云うな。俺の帰る理由はお前なんだ……」
凍てついた想い。
丁寧に紡がれる言葉。
「泣くな、もう……。怪我して悪かった…」
「…うん」
闘うだけが、力じゃない。
こうして、抱かれる私は無力じゃない。
待つ事も、信じる事も、
きっと無力じゃない。
「相変わらず暖かいな……」
「…クラウドが冷たいの」
少しだけ、信じてみよう。
私の力…………。
無力な者は孤高を知らず
(お前が居れば、俺は立てれる)(それは、お前にしか無い特別な力だろ?)
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