NOVEL3

□かわいさ余って何とか
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憧れ、理想、羨望

に反して嫉妬、劣等感、無力感


やっぱり俺はお前が嫌いだよ。


かわいさ余って何とか



「料理?できるよ」

大したことないけどな!
そうやってにかーと笑う田島に俺は開いた口が塞がらなかった。

「何作んの?」
「んー普通にカレーとかチャーハンとか、こないだはオムライス作った!」

綺麗に卵が巻けてうまかったらしい。
俺は一体何が作れるか、そう考えた時にホットケーキしか浮かばなかった。


今まで懸命に野球をやってきて、それなりに成果をあげていた俺の前に現れた絶対的存在。
あれもこれも比べだしたらきりがないくらい、俺はお前に劣っている。

野球以外なら他のやつに負けていてもここまで心はざわざわしない。
ましてや料理ができるかできないかで落ち込むなんて、俺はどうかしている。


「俺はお前が羨ましいよ」

そういうと田島はムッとしたように小さくこちらを睨んだ。

「花井のいいとこなんていっぱいあるぞ、背も高いしかっこいいし頭もいいし優しいし、それにしっかりしてるし面倒見もいいし、それから」

ぱすっ
たまらず隣にいた田島の口を手で覆った。
何すんだよ、と目が訴えている。

「う、わりぃ」

何とも気まずい空気が流れる。
俺は逃げるように思考に耽った。

いざという時に頼りになるし、皆をひっぱる力もある。
さっきみたいに素直に人を褒められるところ、それも羨ましい。

俺なんかより全然かっこいいじゃないか。
お前は俺にないものばかり持っている。


憧れや理想、羨望をお前に向けるのと同時に嫉妬や劣等感、無力感を抱いてしまう俺は醜い。

いっそ大嫌いになってしまえば楽なのに。


「俺はどんな花井でも好きだよ」

考え込んで黙りこくった俺に田島は何を思ったのか、俺には到底言えない男らしい事をさらりと言ってのけた。

俺だってなあ、と喉まで出かかった言葉を飲み干す。

(そうだ、俺だって、どんなお前でも結局好きなんだよ。)

強いお前がたまに見せる弱い部分とかこっちまで幸せにするような笑顔とかとにかく俺はお前が好きで好きでしょうがないわけで。


でもまぁ、こんなに俺の心を掻き乱すのは勘弁してほしい。
やっぱり俺はお前が嫌いだよ。



嫌いだけど大好き






うちの花田はどうしてこんな馬鹿っぷるばかりなんだ。
10.10.31



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