NOVEL

□からかわれた方がマシ
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「例えばさ!話を聞くのと話すの、自分は何対何だと思う?」




からかわれた方がマシ




水谷はおしゃべりだ。
わいわいとにぎやかにするのが好きなのだろう。
ムードメーカーと呼ぶには空気が読めないことが多い気もするので「にぎやか」に留めておく。

今日も練習が終わってくたくたなはずなのに着替えながら元気に話を繰り出している。


「俺は6:4で聞くかなー」

シャツのボタンを留めながらそう答えた栄口に、水谷はぱあっと顔を輝かせて

「俺は6:4で話す方だからちょうどいいねー」

なんてにやけている。


…恥ずかしい奴ら
一生やってろ

この2人は人前でこういうことするから見ていられない。
しかも、天然だからさらに性質が悪い。


「泉は?」

呆れている俺の方に話の矛先が向けられた。

「あー…7か8で聞く」


俺は聞き手だ。
というか、そもそも相手は友達でいいのか?
そう口を開きかけたが栄口に先を越された。


「でも浜田さんも聞く方なのにね?」

「あ?いやあいつは8:2で話す方だろ」


そう答えると二人はきょとんと顔を見合わせる。


「いや浜田さんは聞く方だよ」

普通は俺たちの話をうんうんって聞いてくれそうだよな、うんうん、みたいな会話が目の前で繰り広げられる。

(……えーと)
思い返してみるが、記憶の中の浜田はやはりよく話している。


「それ泉にだけだよ」

「は、何言って」

「泉に合わせてるのかな」
「いや浜田さんが泉に聞いてほしいんじゃない?」


俺をおいてけぼりで話がどんどん進んでいく。
ちょっと待て、ちょっ


「まあどっちにせよ、」



泉だけ特別なんだよ!



なんて笑顔で二人して言うもんだから。

にやけてからかうように言われる方がマシだ、このバカップルめ

恥ずかしげもなく恥ずかしいことをさらりと言ってのけるふわふわコンビに背を向けて、俺は着替えのスピードを早めた。



…顔が熱いのは狭い部室でわらわらと着替えているから。
そう思い込もうと決めた矢先、今日は一緒に帰る日だと思い出してしまい、さらに頬の熱に拍車をかけてしまう俺はおそらく馬鹿なのだろう。

外が暗いのに感謝だ、こんな顔見られてたまるか!




しかし、そんな苦労も虚しく今日のやり取りは水谷によってちゃんと浜田に報告されたようで。

浜田も「確かに俺、泉にいっぱい話したいことあるからなあ」とかいい笑顔で言うので、手を出すどころか文句の一つも言ってやれなかった。


でも泉の話もいっぱい聞きたいんだけどね?

…前言撤回、わざわざ耳打ちで言ってきたので俺はげしりと右足を蹴ってやった。





水谷死亡フラグ

恐らくこの後部活でけちょんけちょんですね

浜ちゃんはお兄さんだから皆の話ちゃんと聞いてあげます
でも泉に構って欲しいのでいっぱい話しかけてると思います

10.04.23


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