NOVEL
□開けっ放し注意
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「なにコレー!」
水谷の開いたエナメルバッグから取り出された一枚のプリント。
田島がひらひらと持っているそれを見た花井の顔がひきつり、阿部が舌打ちしたのが見えたのは位置的に俺だけだろうか。
「わ、ちょっ、田島」
「水谷…」
「クソレ」
「え、俺?俺のせいなの?!」
この様子からだとどうやら7組絡みのようだ。
「お兄さんにしたい人第一位」
読み上げはじめる田島に花井がぎょっとしている。
「おーすげー!一位花井じゃん!!」
「何なのコレ」
いつの間にか田島の隣に移動した泉が興味深そうに問う。
「ホームルームでアンケートやってその結果が出たの」
阿部の視線に脅えながら水谷が答える。
なるほど、自分が何にランクインしてるかを知られるのは確かに恥ずかしいかもしれない。
わらわらと興味を持ちはじめたやつらが田島の回りに集まる。
そんな自分も例外ではなくて、プリントを覗き込んだ。
「阿部、長生きしそうな人2位!」
「2位…微妙!」
「でもわかる気がするな」
田島、泉、巣山がけらけらと笑う。
「るせぇ」
阿部は罰が悪そうにしている。
そういえば、水谷は何にランクインしてるんだろう。
あ、あった。
そしてぱちりと目を見開く。
「み、水谷く、ん」
プリントを覗き込んでいた三橋がキラキラして顔を上げる。
「彼氏にしたい人、い、1位!!すご、い!」
「はぁ?!納得いかねー!」
田島がぎゃあぎゃあ喚く。
沖は三橋と同じ表情である。
「俺もびっくりしたんだけどねー」
眉を八の字に寄せて困ったように笑う水谷を思わず凝視してしまう。
何だこいつモテるのか。
視線に気付いた水谷と目が合う。
「栄口?」
「え、いや、お前モテるんだなぁって思って」
すると、水谷は目をぱちりとさせて、「そんなことないよ」とふんわりと微笑んだ。
あ、キレイ、だ。
男に使うには相応しくない言葉がぴったりと当て嵌まる。
これか。
多分これにひかれる子がいるんだな。
なんて考えていると水谷の頭が沈んだ、と同時に悲鳴が聞こえる。
「いったあああああ!」
「死ねクソレフト」
阿部の絞め技が決まったところで涙を少し溜めた目で水谷はこちらをみて、へらっと笑った。
あ、俺はこっちのが好き。
「まだ笑う余裕があんだな」
「いやギブ、ギブー!」
そんな二人の奥で花井がため息をつくのと苦笑する西広が見えた。
拍手ありがとうございました!
水栄未満のつもりです。
(09.11.01〜09.12.02)
10.03.07