NOVEL

□友達以上恋人未満
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俺は悩みを人にあまり言わない。
ぐっと我慢して自分で消化しようとするからたまにストレスとか溜まっちゃうけど。
だから、どうしても消化しきれない時にちょっとだけ誰かに話を聞いてもらうんだ。

その誰かが水谷になったのはいつからだろう。



友達以上恋人未満



こんなことがあってね、こう思ってね
そうやって俺がぽつりぽつり話すのを水谷は相槌をうちながら最後まで聞いてくれる。
それから決まって「そっかぁ、うーん」と言ってから水谷の考えを話してくれる。


「ごめん、聞いてもらってすっきりした」
「そ?俺でよかったらいつでも聞くよ」
「ん、ありがとう」

ふぅ、と息を吐く。本当にすっきりした。心が軽くなったら、よしこれでまた明日から頑張れる、そう思う。

水谷は優しいから真剣に話を聞いてくれる。
普段はどちらかと言えばへらへらしていて相談するにはちょっと不向きな気もするけど。
でもそんなことなかった。今では俺の大切な相談相手だ。


「俺、水谷好きだわー」

「え」

「あ、誤解すんなよ?」
俺がけらけらと笑うと水谷も笑った。

「俺どきっとしちゃったじゃん」
「なんだそれ」

また二人で笑う。でも嘘は言ってない。

たまにいる、なんかこいつ好きだなあって思う友達。一緒にいて気を使わないとかその雰囲気が心地好いとか。
俺にとってまさに水谷はそうだった。水谷のふわふわしたところも時々真面目なところも話してるとなんか落ち着くところも。
あー好きだなって思うんだ。


「友達以上恋人未満」

「ん?」

「なんかそんな感じ」

「へ?え、どういうこと」

「まあ男に恋人未満って表現はおかしいけど」

「うん?」

俺は水谷に説明しようと頭を働かせる。

そこでふと、
(あ、でも恋人なんていないから水谷が1番?)
なんてよく考えたら恥ずかしいことを言いそうになって踏み止まる。

「何、恥ずかしいこと言わせてんだよ!」
と、ばしりと水谷の肩を叩いて、座っていた椅子から立ち上がった。

「ええ?!何!」
訳がわからないといった顔で俺を見上げている水谷に何だか笑いが込み上げてきた。

「よし帰ろー」
「ちょっ、栄口ー!」

あ、なんかこういうの楽しいな、そんなことを思いながら俺はエナメルを肩にかけて教室を出た。
俺、水谷の前では結構素だと思う。


水谷がわたわたと立ち上がっているのが視界の隅に入ってきたけど、構わず歩きだした。
でもあくまで歩くスピードはゆっくり。

水谷も俺のこと、いい友達だと思ってくれてたらいいな。


放課後の誰もいない廊下はひんやりとした印象で冷たく感じたけど、軽くなった心のおかげかどことなくほっこりとしていた。




水谷は恋愛感情的な意味で栄口が気になってるのでどきっとしちゃいました

10.02.15


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