NOVEL
□数学のお時間
1ページ/1ページ
数学は嫌いじゃない。
授業中は大体睡魔に襲われるものだが、数学だけはきっちり目が覚めている。
黒板の文字をノートに写しながらふと前を見ると、同じようにノートをとっている三橋が目についた。
(珍しく起きてるじゃん)
田島と三橋は授業中完全に寝入っていることがほとんどだから、本当に珍しい。
と、三橋が大袈裟なほどびくっとなったのが見えた。
(何だ?)
三橋はキョロキョロとしてまたノートをとりはじめた。
それからいくら観察してもさっきの大袈裟な動作の意味はわからず、しばらくして俺もノートを写す作業に戻った。
「なぁ三橋」
「な、に?」
授業が終わって昼飯の用意をしながら俺は三橋に声をかけた。
「さっきの時間、ノートとっててびくってなったろ」
「…びくっ?」
少し考えるようにして「あ」と思い出したように閉じていたノートをめくった。
「これ!」
指差す先に書かれていたのは、
「△ABE…阿部?」
「うん!」
なるほど、阿部。
すると同じく昼飯の用意をしていた田島がはっはーんと年代を感じるリアクションで納得したように言った。
「ABEで怒鳴られたの思い出したのか!」
「う」
どうやら図星だったようで三橋はオロオロしている。
いつも偉そうに怒鳴ってばっかだから変なイメージつくんだぜ、ざまぁみろ
にしても三橋も名前ぐらいでびくつかなくてもいいのにな。
阿部はひどい奴だ、全く。
気になってたことが解決すると急に腹が減った気がした。
「浜田ーいつもの」
「う、おお、うまそう!」
「「「うまそう!」」」
今の会話を一通り聞いていた応援団長の男は、
(絶対部活ん時田島が阿部に言いそうだよなー…)
その時の阿部の反応を想像してなんとなくため息をついていた。
拍手ありがとうございました!
△ABEはほんとよく数学で出てきました。