NOVEL

□神様に願い事二つ。
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神様に願い事二つ。




不器用に巻かれたマフラーを見て笑わずにはいられなかった。

「三橋、下手くそだな…」

初め、キョトンとしていたがマフラーをちょいちょいとつついてやると真っ赤になりながら言った。

「い、急いでたから…」
「何で、急ぐんだよ」

するとホラ、というように自分の頬をさすりながら

「寝ちゃってた…から」

よく見ると少し布団の痕がついていた。



12月31日、深夜11時40分。

あまりにも見苦しいマフラーを直してやりながら、俺たちは目的地である小さな神社を目指した。


そこは本当に小さな神社で近くに大きな神社があるため参拝客も居ないだろうと考えて選んだ。
人が多いところは三橋が苦手だし、部活の奴に見つかっても厄介なだけだ。

何よりも二人きりで過ごせる。

待ち合わせ場所から歩いて10分くらい。だけど三橋の歩調に合わせると15分かかる。

寒いな、寒いねとか、星が綺麗だね、綺麗だなとかそんな会話らしくない会話をしながらのんびりと神社へ向かう。

ゆるい上り坂を登ると小さな鳥居が見えた。
案の定、参拝客はいなかった。とりあえず石段に二人で腰掛けてぼんやりとした。
吐く息が白い。例年に比べ随分暖かいとはいえどやはり冬、寒い。

「ここはおみくじなくてゴメンな」
「う、うん。いい、よ」
「お守りも売ってないしな」
「うん、なくてもいいよッ、だって」
「だって?」

目の前に広がる小さな街の夜景を見ていたがふっと視線を三橋に移す。
ぱっと目が合って恥ずかしそうに逸らして、またこっちを見る三橋を見ながらもう一度尋ねる。

「だって、何?」
「…だって、阿部くんと、二人だけだから」

自分の頬がさっと赤くなるのがわかった。

「あ!」
「え?」

間抜けな声が出た、と自分でも思った。

「あ、あけましておめでとうございます」
「え、あ…」

携帯を見ると1月1日になっていた。

「あけましておめでとうございます…去年はありがとう」
「うん、ありがとう。今年も、よろしく、ね」

今年も頑張ろうなとかいろいろ言いたい事があったんだけどいざとなると何も出てこなかった。けれど自然と笑いが込み上げてくる。

「とりあえず…お参りするか」
「うん!」

小さいといっても階段は息が上がるぐらいはあって、寒かった体も心なしか暖まった気がした。


カラン、カラン


大きな鈴の音が二人だけの空間に響く。

もっと、もっと野球が強くなれますように。
そして、ずっと三橋と一緒に野球が出来ますように。


元来た道を戻って三橋の家に向かう。

「なぁ、何願ったの?」
「ん、んと…」

簡単に予想できる。あれだけ野球が好きな奴なんだ。絶対に野球の事だろう。

「野球、が強くなれますようにって」

ああ、やっぱり。

「あと、阿部くんとこれからも野球が出来ますようにって…」
「…何、お前二つも願ったの」
「う、うん…決めれなかったから…」

はぁ…全く、コイツは。

「…俺もだよ」
「え?」


そっと三橋の手を取る。冷たいけど心地いい。

「よし、三橋んち行ったらおでん食おうな」

逆手に持っているコンビニの袋をガサガサと振る。

「う、ん!」


また来年も再来年も。ずっとずっとこうやって一緒に過ごすんだ。


吐く息は白い、けど繋いだ俺の左手と三橋の右手は熱く、体全体に熱が伝わっていて冬なんて忘れるぐらいだった。




空の星が行きよりも輝いて見えた。






私が初めて書いたおお振り小説です。な、懐かしい。

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