NOVEL

□こいわずらい
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栄→水

こいわずらい


恋の病とはよく言ったもの、まさか俺は男を好きになるだなんて思ってもみなかったわけで。

只今、絶賛不健康中である。

「さーかえーぐちっ」
「あれ泉なひすんほ!」

ほっぺをぐいーって引っ張るもんだから、ちょっ、痛い痛い!うっすらと涙が浮かぶ。

「ため息つきすぎ」

やっと解放された俺の頬は少し熱を持っている。
「だからって引っ張らなくても」

「…悩み事あんなら聞くぜ、俺に言えなくてもあいつら誰でも聞いてくれる」

あいつらとは目の前のグラウンドで水を掛け合っていたり、またそれを微笑ましくだとか目を吊り上げて見守っている俺のチームメイトのこと。

「ありがとう、…そのうちね」

まだ心の中を洗いざらい話す勇気はなくて泉に笑顔だけ返した。

そんな泉は、はあ、とため息を吐いて立ち上がった。
泉もため息ついてるじゃんとは言わない、多分怒るから。

「じゃそのうち、な」

そう言ってグラウンドの輪の中へ戻って行った。
入れ代わりに篠岡が薄めたポカリの入ったカップを渡してくれた。

「今日特に暑いもんね」

ベンチに座ったままの俺を心配して気にかけてくれたんだろう。
厳密に言えば日光のせいで立つ気になれないわけじゃないんだけど、不健康中には変わりないので好意を有り難くいただくことにする。

(冷えすぎてなくて丁度いい、いい仕事するなあ)
一気に飲み干してありがとうとカップを返すとにこりと笑って受け取ってくれた。

俺は何で目の前の頼りになる優しいマネジみたいな子じゃなくて、へらりとした男を好きになってんだと思った。

幾度となく繰り返した自問自答。
好きなんだからしょうがないと割り切るには俺はまだまだ子どもで、どうしたらいいのかわからなかった。

俺はいつまでこの病と付き合っていかなければならないのか。
一時の風邪のようなものか、はたまた花粉症のような持病となってしまうのか。
今のところ特効薬もない。
あいつの笑顔は俺を一瞬ふわりと幸せにさせてすぐにぎゅっと心をわしづかむ毒となる、言わば麻薬みたいなものはあるけれど。
でもまたあの笑った顔が見たいと思ってしまうあたり中毒性はかなり強めだ。


考えたって仕方ない、頭を軽く振って重い腰を上げた。


この病から解放された日、俺は笑うのか泣くのか
闘病生活はあとどれくらい

何もわからないけど、ただひとつ言えるのは。

「恋ってしんどい」



恋患い





私はずっと恋患いだと思ってました、恋煩いなんですよねほんとは

100927


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