NOVEL
□君がいれば
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猫派か犬派かと言われると、断然犬派。
尽くしたら尽くしただけ答えてくれる、そんな忠実なところが好きだ。
おいで、と呼んだらしっぽを振ってパタパタと寄って来る。
だから思いっ切り撫でて撫でて可愛がってやる。
ボールで一緒に遊んだりして、思う存分充実した時間を過ごす。
うん、やっぱり俺は犬派だ。
只今午後7時半。
俺はベッドに転がりながら、最近深夜からゴールデンに進出したバラエティーを見ている。
深夜の方がおもしろかったなぁ、ゴールデンになるとコーナーが固定になって毎週同じことの繰り返しになるし。
なんて考えていると、視界右に位置する黒髪が動いた。
床に座り、ベッドにもたれながら持ち込んだジャンプを読んでいた泉は、うーっと背伸びをしてまたジャンプに目を向けた。
「いずみーおもしろい?」
「ん」
30分前に話し掛けるとこんなリアクションだった。
まぁ漫画読んでて話し掛けられたら、そうなるのもわからなくはないけど…
もう少しかまってくれてもいいんじゃないだろうか。
手元のジャンプを覗き込むとあと10分もあれば読み終わりそうな具合であった。
読み返すかな、まぁそうだとしても20分の我慢だな。
そんなことを考えながら、もはやパターン化してお馴染みの展開になったバラエティー番組にあくびをした。
◇◇◇
「んー…」
気が付くと目の前が真っ暗になっていた。
寝たのか…
と、右腕に違和感を感じる。
「え」
間抜けな小さな声が出た。
右腕に乗っかっているのは泉の頭、俺は何故か泉を腕枕している。
なんで?
俺寝ぼけて泉になんかした?
それとも泉が自ら?
ひとりで勝手に盛り上がっていると、黒髪がごそりと動いた。
…起こしたか?
「…ん」
泉は起きる様子もなく、身じろぐように腕に顔を擦り付けた。
…かわいい。
このままぎゅっと抱きしめてしまいたい。
が、練習で疲れている泉を起こしたくはない。
今日だっていつもより早めに終わった練習の後、すぐにうちまで来てくれたのだ。
帰ってすぐにでも休みたかっただろうに。
おいでと言っても寄って来ないし、いつも全くじゃれつこうとしない。
けど、たまに、たまにこんな風に甘えてかわいい一面を見せる。
気まぐれで、まるで猫のような腕の中の愛しい人。
真っ黒な柔らかい髪にそっと口づけて、やんわりと抱きしめた。
俺は犬派、猫は泉だけで十分だ。
そしてまた瞼を閉じた。