NOVEL
□あいつら
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*田島視点です
疑問
“あいつら”はそう、まるで恋人のような。
あいつら
夏が滑り込んできた6月下旬。モモカンは暑いのにも構わず、相変わらず声を張り上げて野球をしている。
そして、俺たちもそれについて行く。
昼間は肉体労働だって花井が言ってた。
俺なんて昼間は居眠りだっていうのに、モモカンはゲンミツに凄い。
最近気になることがある。
あいつらさぁ、なんか変なんだよな。
お互い意識しあってんのが見え見えなのに、どっかブレーキかけてて。
もしかすると2人とも、自分達の気持ちに気付いてないのかも知んないけど。
栄口が他の人によりも水谷に笑いかける数が多いのは、単に水谷が阿部に虐められているのをかわいそうに思っているからなのか。
水谷が他の人によりも栄口に真面目な顔しているときが多いのは、単に栄口のいい人オーラに影響されているからなのか。
そうなのか、そうじゃないのか、本当の気持ちは俺にはわからないけど。
ああ、見ているこっちがもどかしい。
少なくとも俺にはあいつらがただの友達同士には見えない。
恋人に見えてしまうのだ。
ぎこちない雰囲気はしてるんだけど、何だろう、言うならば『お似合い』って言葉がぴったりかもしれない。
お互いまだ会って3ヶ月ほどなのに水谷が栄口のことを、栄口が水谷のことを何でも知っているような印象を受ける。
全く理解不能ー。
そんなことを花井に言ったことがある。
すると花井は言った。
「んー…あいつらは恋人じゃないな。むしろ夫婦」
あぁ、なるほど。パズルのピースがかたんとはまった気がした。
馬鹿な俺でもストレートに納得だ。
結論
“あいつら”はどうやら夫婦だったらしい。
田島視点のミズサカ。
多分、部内でやつ等の感情にいち早く気付くのは当の本人達ではなく野生児田島とお母さん花井だと思う。