NOVEL

□心理テスト
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彦星と織姫は年に1回、七夕の日にしか逢えない。

天の川で2人はどんな話をするのだろうか。



心理テスト



「…はぁ?」

時間は昼休み。
やってなかった課題に必死になってとりかかっているところに話しかけてくる水谷ほどウザいものはない。

「いや、だから心理テストなんだって!」
「心理テスト?」

そこでようやく俺は顔を上げる。
隣で同じく課題をしていた花井も顔を上げた。

「そ、だから答えてよ」

水谷がいきなり心理テストとか言い始めても不思議ではないが…
まぁいい、時間も時間なので課題ももう間に合いそうにない。

すっぱり諦める事にするか。

ちなみに水谷は当の昔に諦めている。


「悪ぃ、聞いてなかった。もう一回」

すると水谷は「ええー」と一瞬不服そうな顔をしたが、すぐに嬉しそうに答えた。

「彦星と織姫は年に1回、七夕の日にしか逢えません。天の川で2人はどんな話をすると思いますか?」

やっぱり無視しとけばよかったかもしれない、と手遅れの後悔をする。

大体なんだ彦星と織姫って。そんなの考えたこともない。

七夕なんてせいぜい小学校低学年ぐらいまでの行事だから、クリスマスやお正月に比べると余りにも縁遠く感じる。

しかし、ここで答えてやらないと俺は繊細なんだと常に叫んでいる水谷がまためんどくさいことになる。



彦星と織姫か…お互い愛し合っているのに不運にも別れなければいけなかった恋人どうし。

年に1回しか逢えないのなら、きっと…

「今日こんなことしたんだ、とか今度こんなことするんだ、とか」


「へぇ、何で?」
「何でって…安心するだろ」
「安心?」


いまいち理解してないような水谷を横目に俺は続ける。


「そ、安心。人間ってのは知らないと不安になるからな。相手のことを知ってるとやっぱり安心する。

自分はいつもこんな風に生きてるんだ、だから心配しなくていいって伝えてやれば相手は安心する。

もちろん自分も相手にそう言われると安心する」


きょとんとしていた水谷がにっこりと笑った。

「何だ、気持ち悪ぃ…」
「じゃじゃーん、結果発表!」

どこまでも鬱陶しい奴だな…チラリと時計を見るとあと少しで昼休み終了の予鈴がなる時間だった。


「その答えはー…あなたが恋人にして欲しいことです!」

「あ?」


「まぁつまり〜…阿部が恋人にして欲しいこと。阿部って安心しておきたいんだ〜!」

横で見ていた花井がああ、と納得している。

「それ、当たってんなぁ。阿部っていつも三橋に日常報告させてるもんなぁ」


さぁっと自分の顔が赤くなるのがわかる。

「あららー?阿部くーん、熱ですか〜?」
「…るせぇ、水谷…殺すぞ」
「説得力がねぇぞ、阿部」
「…花井もかよ…」


予鈴がなった。




そして部活の時間、三橋に「今日は寝ずに授業受けたか?」と聞いた自分に苦笑せざるを得なかった。





七夕仕様です。
阿部は過保護な気がするので、三橋にその日の出来事を話させると思います。
ちなみにこんな心理テストはありません。嘘っぱちです。


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