NOVEL

□あれ?
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「勇人ー」

そう呼ばれて栄口と俺が振り返ると、そこには窓からひらひらと手を振る水谷がいた。

へらりとして手招きしている。
机のそばにいた栄口がパタパタとそちらへ駆け寄っていた。


「借りてたMD持ってきた」

「えー部活の時でよかったのに」

「いや、早く話したくてさー7曲目がやばくて」

「マジで?俺も7曲目めっちゃ好きなんだって」

「やっぱり!?なんか勇人好きそうだなとか思ったんだよ」

水谷から栄口へ、オレンジのMDが渡されるのが見えた。



相変わらず水谷と栄口は仲がいい。

3日ぐらい前にも水谷が栄口を誘ってCDショップに行っていた。

よくMDの貸し借りをしているし、音楽の話以外にも共通する部分があるんだと栄口が言っていた気がする。




あれ?
でも何か違和感。




いつもは感じない違和感が何なのか探ろうと話し込んでいる2人に目を向けるが、よくわからない。

そんなことを考えている間に授業5分前の予鈴が鳴った。
水谷が教室に帰っていくのを見送った栄口がこちらに戻ってくる。

「ごめんな、巣山に全部日誌書かせちゃって」
「いいよ、全然。MD貸してたの?」

「んーそう、文貴が前から聴きたいって言ってたやつ」



そこではっと気付いた。
さっきの違和感の正体―――



「あれ、お前ら呼び方変えたの?」

「え?」

「前まで名字だったのにさっき名前だったよなー」

「!!」

はたっと口を押さえてどんどん赤くなる栄口。

え、何かまずいこと言った?

きょとんとしている俺に栄口がしどろもどろに何か言おうとしているうちにチャイムが鳴った。

(何か言っちゃったかなー)



栄口が赤くなった訳を知るのはまだもう少し経ってから。






巣山目線ということで初登場。
巣山くんは彼らがいちゃこいてるのを見せられている、何だか申し訳ない人なイメージ。


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