NOVEL

□こいわずらい
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泉→浜


こいわずらい


(うるせぇ)

ざわめく昼休みの教室が、ゆらゆらと俺を揺する金髪の男が、

いや、一番煩いのは俺の心臓


「泉ー」

今、机に伏せてるんですけど。空気読めないのか

「泉ってばー」

今日は何でこんなしつこいんだ。

「いーずーみ!」

文句を言ってやろうとガバッと起き上がるとすぐそこに浜田の顔があって思わずひるんだ。

「な、んだよ」

うわ動揺しすぎだろ俺

そんなこっちの事情などお構い無しににっと笑って携帯をひらひらさせた。

「今日中学のやつらと飯行くんだけど来ない?」

俺に聞いてきたってことは中学のやつら、はおそらく野球部か。

あ、今心臓がぐってなった。

知っている、これは嫉妬とか独占欲っていう大層めんどうな感情からくる心臓の誤作動。
生きる血液だけ送ってろってーの。

「行かね」

「何で」

「部活の後しんどいから」

ほんとの理由は話せないけどこれも間違いなく理由のひとつ

「じゃあ俺もやめよ」


さも当たり前のようにそう言うと携帯をかたかたと打ちはじめた。多分返事を打ってるんだろ。

「なんでお前行かねーんだよ」

「んー?泉行かないから」

ますます意味がわからない。
あ、と小さく口を開く。

「部活終わったらコンビニ行こうぜ」


理解不能すぎる。
なんで飯の約束やめてコンビニなんだ、部活9時まであんだぞ、お前それまで待ってるつもりか?

「アイス、新商品出てんだ、食いたくてさぁ」

意味がわからないと思いつつも、いらぬ期待がぐるぐると巡る。
やめろ、こいつはそういうつもりで言ってんじゃねぇ。期待すんな。

「泉、グレープフルーツ味好きだろ?」

「…」

俺は小さく頷いた。グレープフルーツ味…よくご存知で。


例え俺みたいな歪んだ気持ちが浜田には全くなくても、俺のこと考えてくれたのがわかってしまえばこの顔が赤くなるのに十分理由になる。

見られたくなくて俺は寝ると机に伏せた。


浜田はじゃあ放課後なーとその場から離れて行った。(足音がした)


心臓が煩い。
なんでこんなにざわつくのかなんてそれぐらい知っている。

ああもう、早く時間経ってしまえ、放課後になれ



恋煩い



泉は煩い心臓だと思ってる。

100929


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