GX一般向け小説

□7月7日
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十代、敗北。

「ちっくしょー。俺、アカデミアに入ってから、負けたのはカイザーとエドの二回だけなのに。どうしてヨハンにはしょっちゅう負けるんだよ。」
「その言葉、そっくりお前に返すぜ。今だから言うけど、俺なんか、ここに来るまで4年間無敗だったのに、初日にお前とデュエルして負けたときは愕然としたぜ。世界は広いよなーって実感したな、あのときは」
「へえ、そうか。じゃ、もう一勝負するか?」

十代が提案したとき、

「ん、どうした、ハネクリボー?」

十代の相棒、ハネクリボーが耳元で何事か囁いた。

「あ、うん。そうだな、忘れてた。」
「忘れてたって、何を?」
「今日は7月7日だろ」
「そうだけど、それが何か?」

そうか、ヨハンは知らないのか。外国人だもんな、日本語がうますぎるから普段は忘れてるけど。

「今日は、てか、今夜は七夕なんだ。梅雨明け前だけど、今日は珍しく晴れてるから、星を見に行こう、って、ハネクリボーが」
「たなばた?」
「うーん、あとで説明する。とにかく外出ようぜ」
「わかった」

二人は揃って寮の外に出た。

「夜の散歩もいいもんだな」

ヨハンが呟く。

「ああ、夏場はな。昼間の暑さはつらいけど、夜風は気持ちいいよな」
「で、どこ行くんだ?」
「別にどこだっていいけど、岸壁かな、あそこなら寝転がれるからさ」

岸壁には人気がなく、しんとしている。
十代は草の上に寝転んだ。

「ヨハンも来いよ」
「ああ」

十代の隣で、ヨハンは同じように寝転んで、夜空を見上げた。
視界は満天の星空。

「きれいだな」
「だろ、俺、都会育ちであんまり星見たことなかったから、ここへ来てこの空を見たときはすげえ感動したな。」

十代は得意げに言った。

「ここは回りじゅうが海で、地上の光がとどかないから、星がよく見えるんだ、っていつか明日香が教えてくれた。流れ星も天の川も、ここへ来て初めて見たんだ。」
「へえ、そうか。ところで、天の川ってなんだ?」
「え?」
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