GX十代女体小説

□恋人たちの時間 Green Storm
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最近、ヨハンはやたらと忙しい。
それはなぜかというと、二年で高校卒業に必要とする単位を取得してしまったので、あまった時間で、父の会社の後継者となるべく、日本各地を回ってマーケティングの勉強をしているのだ。
今は京都でのファッションショーに同行していて、午後の新幹線で帰ってくる予定になっている。
なぜ、そうまでしなければならないのか、それについて十代は詳しいことを知らないが、実はこんな背景があった。


本来、ヨハンは母国への帰国を実家から強く勧められていた。
ヨハンの父親はスウェーデンに本社を持つ、大手アパレルメーカーの日本支社長である。その一人息子であるヨハンは、祖父から帰国してスウェーデンの本社を継ぐことを期待されており、高校を出たら、母国の大学に通いながら祖父の会社を手伝うものだと思われていた。
しかし、ヨハンはそれを断り、日本に残ってパトリック大に進学する道を選んだ。
それは、日本の少女に恋をしてしまったから。
遊城十代、幼馴染の彼女に。
彼女と別れたくない、一生一緒にいたい、ヨハンはそう考えており、そのためなら、ずっと日本で暮らしてもいい、と思っている。

「もう、スウェーデンには帰らない。将来は十代と結婚して日本で暮らす、だから日本支社を俺にくれ!」
と父親に宣言し、父は大層驚いたふうで、
「ほう、女ひとりのために人生を決めるか?」
と、ヨハンに問うた。
「人生で彼女より大切なものはない」
そうきっぱりと答えたヨハンを見て、父は満足げに笑い、
「いい覚悟だ。だが、ここを継げるだけの実力をつけなければ、会社は譲れない。彼女にプロポーズするのはそれからだ。明日から私の仕事を見て勉強しろ、学校には私から説明しておく。」
と言った。

かくして、ほとんど学校に行けなくなってしまったヨハンは、せっかく両思いになったかわいい恋人とのデートもままならないほど忙しい日々を過ごしている。


そんなこととは露知らない十代は、忙しすぎる恋人のことが少々不満だったが、
「いつも一緒にいられなくてごめん。でも、それもこれも将来のためだからさ」
という、ヨハンの言葉に一体なんの将来なのか、詳しいことはわからないまま頷くしかなかった。


でも今日は。
十代の気持ちは浮き立っていた。
今日は金曜日、そして、この週末、ヨハンはフリーだ。久しぶりに一緒に過ごせる。
少々浮かれていた十代は知らないうちに小走りになっていた。
「好事、魔多し」
十代はこのあと自分に降りかかる災難をまだ知らない。
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