GX女性向小説
□勇気の出る魔法 Magic Candy
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ブルー寮の広いエントランス。そこに十代が駆け込んできた。
「やあ、十代くん」
ロビーの椅子に腰かけて本を読んでいた天上院吹雪が声をかける。
「ヨハンから、伝言を預かっていてね、急にクロノス先生に呼ばれて少し遅くなりそうだから、部屋で待っていて欲しいそうだ」
「あ、はい。ありがとうございます」
十代は答えた。その後に小さくため息をついたのを見て、吹雪は微笑んだ。
「ヨハンも早く君に会いたいはずだよ。うまくいってるのかい」
「え、うまくって、あの・・・」
十代の顔がぱあっと赤くなる。
「俺たちは友達で、そんなんじゃ」
「そんなって?」
「い、いや、ええと」
うろたえる十代に、吹雪は思わず吹き出した。正直なことこの上ない。
「なんで笑うんですか」
「いや、ごめん、ごめん」
吹雪はクスクス笑いながら、言葉を続けた。
「これだけ明白なのに、ヨハンは気づいてないのかな、きみの気持ちに」
「お、俺の気持ちって」
「好きなんだろう、ヨハンのこと」
図星をさされ、十代が耳まで赤くなる。
「だけど、俺は男だし、ヨハンも男だし」
「恋愛にジェンダーなど関係ないさ、大事のはお互いの気持ちだろう。思い切って打ち明けてみたらどうだい」
「で、でも」
「勇気がない?」
十代はさらに赤くなって頷く。