GX女性向小説

□勇気を出して
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       勇気を出して
We'll Make Love2



「今日はデッキは持たずに俺の部屋に来てくれないか?」

ヨハンはそういい残すと、十代の返事を待たずに去っていってしまい、後に残された十代はふぅーっと大きくため息をついた。

そっと、腰のデッキケースに手を触れてみる。
デッキを持たずにヨハンに会う、それは今の十代にとって、かなり勇気のいることだった。

なぜなら、この1ヶ月あまり、デッキは十代の盾であり、鎧であったから。
ヨハンに対する、いや、十代自身の気持ちに対する。



ヨハン・アンデルセンが十代にとって「特別な存在」になったのは、いつからだったろう。

初めて会った時から、明るく澄んだ緑の瞳と、爽やかな笑顔に魅せられていた。
すぐに意気投合し、親友となった二人だったが、次第に自分の中で、ヨハンの存在が変化してゆくのを十代は感じていた。

一緒にいるとすごく楽しいけど、ドキドキして何だか落ち着かない。
ヨハンの姿をいつも目で追ってしまうくせに、近くに来られると胸が苦しくなる。
それに、ヨハンが他の誰かと話しているのを見ると、何だかイライラする。特にそれが女子だったりするとイライラを通り越してムカムカしてきたりする。

今まで一度も、誰に対してもこんな気分になったことはない。
この気持ちは一体何なんだろう。
その疑問は意外な形で解き明かされた。ヨハンの告白によって。


ひと月ほど前のこと、十代は、放課後、ヨハンに中庭に呼び出された。
そこで十代はヨハンの口から意外な言葉を聞かされた。

「十代、俺はお前が好きなんだ。親友としてよりも、もっと。お前に恋してる、俺の恋人になってくれないか?」

恋?そうだったんだ。ヨハンといるとドキドキして落ち着かないのも、いつもその姿を目で追ってしまうのも、ヨハンが女の子といるといやな気分になるのも。
そのヨハンが、俺を好き?親友としてだけじゃなくて。
なんだか体がフワフワする、幸せってこういう気分なんだ。

「ああ、いいぜ。俺もヨハンが好きだ」

十代の答えに、一瞬、目を見開いたヨハンだったが、やがて、すごく嬉しそうな顔をして十代を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。
思い出すたび、今でも胸がドキドキする、とても大切で、幸せな思い出だ。
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