GX一般向け小説

□いつか、また
1ページ/6ページ


いつか、また  I'll Be Back For Him





船は出港した。俺たち3名の留学生を乗せて。

数々の思い出の残るデュエル・アカデミア。ここは感慨にふけるところなんだろうけど、俺はとてもそんな気分になれなかった。

「不機嫌そうだな、ヨハン」

声をかけてきたのは、ウエスト校チャンピオンのオースチン・オブライエン。言葉数は少ないが頼りになる男だ。
俺は返答につまった。なんて答えればいいんだ。俺が戸惑ってるのを感じたのか、彼は言葉を続けた。

「結局、十代には会えずじまいか?」
「ああ」

口に出すと、既にめちゃくちゃに傷付いていた俺の胸は更に痛んだ。

「畜生、なんだってんだよ」
俺はデッキの手すりを握り締め吐き捨てた。

遊城十代、初めて本当の親友と思える奴に出会った、そう思っていたのに。
アカデミアでは毎日のようにデュエルし、お互いの精霊たちと、まるで家族のように一緒に過ごした。
異世界では数々の苦難をともに乗り越え、俺がユベルに体を乗っ取られていたときは、命がけのデュエルで助けてくれた、かけがえのない親友、だったはずなのに。


ユベルとの死闘の末、流星に乗ってこの世界に帰ってきた十代。尤もそれを見たのは翔だけで、にわかには信じがたい話だが、翔はくだらない嘘をつくようなタイプではないから本当なのだろう。
今となっては、そこにいたのが俺であればよかったのに、とまで思うようになっていた。

俺たちが異世界からの帰還を果たしたとき、俺の留学期間はあとわずかになっていた。だから、残り少ないその時間をできる限り十代と過ごしたかったのだ。

なのに十代は帰ってきてからというもの、レッド寮の自室から、ほとんど一歩も出ない生活を続けていた。
かつていつでも開かれていたレッド寮の十代の部屋は、俺にとってとても居心地のいい場所だった。楽しかった思い出のほぼすべてがそこにあるといってもいい。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ