GX一般向け小説
□混沌(カオス)にて
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混沌(カオス)にて
The Jewel Needs The Other Jewel
”十代、十代、ごめんよ、僕は本当は知っていたんだ”
ここは次元のはざま、混沌(カオス)と呼ばれしところ。
十代は眠り続けている。
生身の肉体を持つものが精霊の魂を受け入れるということは、その肉体にかなりの負担をかけることになる。
ユベルを己と融合させた十代とて例外ではない。
指1本すら動かすこともかなわず、”遊城十代”としての精神も眠り続けている。
今、彼の精神世界を旅するものがいる。精霊ユベル、ひたすら十代を愛し続け、いま、その彼とひとつになろうとしていた。
ユベルが十代の精神の奥底でみつけたもの、それは、この上なく美しい深紅の宝石だった。
(ピジョン・ブラッドのルビー、これが「今」の君か)
ユベルは知っていた。命のある限り、「魂」と「肉体」は結局のところ切り離せないことを。十代の「魂」は、まごうことなく、かつてユベルが自身を犠牲にして守り抜き、ユベルのことを、ユベルだけを愛すると誓ってくれた「彼」のものに他ならなかった。けれど、「彼」の肉体は既に滅び、もうこの世にはない。
そして、新たに”遊城十代”という肉体を得て、この世に生まれし者。かつての「彼」と同じように覇王の力を持ち、破滅の光と戦うべく運命づけられた者。
だが、違う肉体を持って生まれてきた者は所詮「同一」ではないのだ。
なぜなら「ひと」は魂と肉体の融合物なのだから。
わかっていた、本当は。ユベルの愛しぬいた「彼」は、本当の意味ではもうどこにも存在しないということを。
でも、認めたくなかった、耐えられなかった、悠久の時の中、たった一人で残されることに。
だから現世に生まれ変わった彼を求めた。
現世の「遊城十代」もまたユベルを愛してくれると信じて。