GX一般向け小説

□幸せな香り
1ページ/3ページ


幸せな香り・・・   Hand In Hand




手を伸ばしたのは、誰かに握り返して欲しかったから。
幾度も、手を伸ばしてきた。

けれど、
いつも俺の手は虚空を掴んだ。



                     幸せな香り・・・   Hand In Hand


見渡す限りの灰色の砂漠

「ここは?」

見覚えのある景色。確か初めて異世界に飛ばされたときも、この場所だった。
だが、
あの時は確かに見えていたはずのDAの校舎が見当たらない。

そして、
襲い掛かってきたハーピィも
ほかの精霊たちも

誰もいない
ただ、
見渡す限り荒涼たる砂漠が広がっているだけ


「誰か、誰かいないのか?!」

思わず叫んでみる。
いらえは、ない。

あてもなく、歩き出してみる。
行けども、行けども
何もない、そして、誰もいない。

みんな、
どこへ行ってしまったんだ。

翔、明日香、万丈目、剣山、吹雪さん・・・
みんな・・・


どのくらい歩いただろうか
不意に足元の砂が崩れた。

そして、
少しずつ、体が砂の中に引き込まれていく。
もがけばもがくほど

「な、流砂か?!」

必死で脱出を試みるが、
体はどんどん砂に埋まってゆく。
まるで、
蟻地獄に捕らえられた蟻のように

砂は足元から、膝丈へ、そして腰へと
確実に上昇してくる。

いやだ!
死にたくない、誰か、誰か助けて

必死で手を伸ばす

けれど
きっと誰も俺の手を握り返してはくれない

ここには
誰もいないから

でも

「ヨハン、ヨハン、ヨハンー!!」

叫びながら手を伸ばす
無意識に


そのとき

「十代!!」

ああ、
懐かしい声

それとともに、
伸ばした手がしっかりと握られ
俺は、引き上げられた

暖かく力強い手によって

助かった。
安堵感が胸に広がってゆく

ヨハン・・・
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ