GX一般向け小説

□留学生ヨハンの苦悩
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 留学生ヨハンの苦悩

The Overseas student’s Suffering
「幸せのかけら」Part8 Johann side


バスルームのドアを後ろ手で閉め、ヨハンはドアに体を預けた。

(限られた時間がどのくらい充実してるかの方が重要、か。何を偉そうに、達観できてないのは俺だ。)

ヨハンは今まで自分は人間関係に淡白な方だと思っていた。
生まれ故郷からストックホルムへ、そしてアークティックへ。そのたびごとに出会いと別れを繰り返してきた。
それなりに親しい友人はいたけれど、そして彼らと別れる時は確かに淋しかったけれど、辛いとまで思ったことはなかった。


なのに、

今、十代との別れを想像しただけで、この身が引き裂かれるほどに辛い。
十代が好きだ、十代と別れたくない。
デュエルが強いから?精霊が見えるから?
いや、理屈も理由もない、ただ、十代が十代だからだ。
自分が全身全霊で十代を求めているのがわかる。


けれど、時は止まってくれない。確実に、別れの日は近づいてきている。
帰りたくない、ずっとここにいたい。
だが、それは出来ない。ヨハンは日本国籍を持たない留学生だから。

DA本校への留学は初の試みだ。今後、留学生制度がうまく機能していけるかどうかは第一期生であるヨハンたちの肩にかかっているといっていい。
だからアークティック校代表として、常に詳細なレポートを提出し、デュエルでも結果を出して次に繋げてゆかねばならない。それが先駆者たるものの務めだ。

ビザの有効期限は留学期間終了まで。それが過ぎて以降も日本に残れば不法滞在となってしまう。
アークティックから不法滞在者を出し、強制送還などという事態になれば、留学生制度は失敗だったということになり、今後、後輩たちがこのデュエルの聖地、日本に来る機会は失われてしまうだろう。
そんなことは絶対に出来ない、ヨハンは拳を握り締めた。
考えたって仕方のないことだ、十代にこんな顔を見せるわけにはいかない。
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