GX一般向け小説

□再会
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再会

 Judai Meets His Close Friend Again


残金125円。手のひらの上で金額を確認した遊城十代は深いため息をついた。

ここは童実野町の町はずれの河原、季節は夏の初め、6月のカレンダーが最終週に入ろうかという土曜日の夕暮れ時である。
三月にDAを卒業し、大徳寺先生(の亡霊)と雄猫のファラオとともに旅立った彼が何故ここにいるのか、それにはこんな訳があった。

基本的に十代の移動手段はヒッチハイクである。それもフリーの長距離輸送トラック。普通の自家用車はまず乗せてくれないし、乗せてくれたとしても、あまり遠くまでは行かない。大手の会社のトラックは社内規定があり、関係のない人間は絶対乗せない。タクシーはそもそも商売だから乗せてくれるわけがない。

その点、自分の裁量である程度物事を決めることが出来、長距離を移動するフリーの輸送トラックは当たりが出やすいのだ。
最初、十代は西へ移動していた。そして九州地方で折り返し、関東地方へ戻ってきたのだが、今日、たまたま乗った車が童美野町の近くを通るというので、懐かしくなって車を降りたのだ。

「はあー、腹減ったあー」

ファラオの入ったナップサックを投げ出し、河原に寝転んだ十代はひとりごちた。

「フニャァー!!」

突然の仕打ちに怒ったファラオが飛び出し、
”十代くん、これからどうするにゃ?”
その口のなかからさまよい出た大徳寺先生が尋ねた。

「どうって、125円じゃ一番安いコンビニのおにぎり一個しか買えないよな。」

はあーっ、ともういちど深いため息をつく。

「今夜は童美野公園で野宿だな、あそこなら水もトイレもあるし」
”だから僕の力を使えばいいのに、全く十代は強情なんだから。”
出し抜けに話しかけてきたのは彼と融合し、今や守護精霊となったユベルである。
”ひえー”

と叫んで大徳寺先生はファラオの中に引っ込んだ。どうも亡霊と精霊は相性が悪いらしい。と、言うよりは先生が一方的にユベルを恐れているだけなのだが。

「お前の力使って誰かにメシ奢らせるとか?言ったろ、そういうズルはなし」
”そういうの、宝の持ち腐れって言うんだけどな”

ユベルは不満そうだ。

「まあそう言うなよ。スクリーニングはしてもらってるだろ、感謝してるぜ」
”そんなの、当たり前だろ!僕の大切な十代に何かあったら”
「うん、だから感謝してるってさっきから言ってるだろ!」

十代はヒッチハイクする際には、必ずユベルの力を借り、その人物が信頼できるかどうかを見極めている。十代としては、相手を信用していないようで気が引けるのだが、もし万一、ドライバーが悪い人物で十代に危害を加えるようなことになったら。

ユベルはそいつを殺しかねない。そういう苛烈な性格なのだ、こいつは。まあ、それもすべて十代への愛ゆえではあるのだが。

「あ、でもさ、今日一日を何とかしのげば」

言いながら十代はナップサックのなかを探った。出てきたのは一枚のビラ。

「童美野町デュエル大会、明日の午後一時から、優勝賞金五千円。これでしばらくは食いつなげるぜ!」
”ふぅーん、五千円で何日もつかな。しかも、次の資金が入るまで毎日野宿。”
「うっ!!」

ユベルは容赦ない。

”今日はたまたま晴れてるけどね、まだ梅雨は明けてないし、童美野公園は蚊も多そうだなあ、まあ、僕には関係ないけど”

ユベルはそういい残すとすうっと消えていった。
ユベル、お前どうしてそう次々とネガティブな発想を口に出すんだ。しかも、なにかちょっと嬉しそうな口調ってのはどういう訳だ。お前は本当に守護精霊か!このサディスト!!
などと思いながら十代はますます気分が沈んでいくのを感じていた。悔しいがユベルの言うとおりだ。
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