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□虹の架け橋
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虹の架け橋 The Rainbow Dragon

珍しくヨハンがソファでうたた寝をしている。
十代は、よくソファで居眠りをしては「風邪ひくぞ」とヨハンに注意されるのだが。
「ヨハン、起きろよ、風邪ひくぞ」
ここぞとばかりに十代はヨハンに声をかけた。
少しばかり優越感に浸る。

ヨハンは物憂げな様子で目を開くと、十代を見つめた。
目と目が合う。
(何か、違う)
直感的に十代は思った。どこか、ふだんのヨハンとは雰囲気が異なっている。

ヨハンが口を開く。その口から出た言葉は十代を戦慄させた。
「どうした、覇王」

一瞬、息が止まりそうになった。
まさか・・・。鏡を見る勇気がない。
ヨハンは十代の逡巡に気づいたふうもなく、言葉を続ける。

「どこかの結界が破られたのか。ビブロストを呼ぶか?」

明らかに違う。いつものヨハンじゃない。
だが、ヨハンに間違いない、とも思う。ヨハンがユベルに体を乗っ取られていた時、十代はすぐそれに気づいた。ヨハンではない、と。
しかし・・・。
これはヨハンだ、何か別のものに支配されているわけではない、十代にはそれがわかる。
でも、結界って、ビブロストって、何のことだ。

「ヨハン?」
ようやく声が出せた。
するとヨハンは不思議そうな顔をして十代の顔をじっと見つめた。
「ヨハンとはなんだ」
「何って、自分の名前忘れたのかよ!」
「名前?そうか、お前は覇王の現身か。では、ここは私のいるところではないな」

ここへ来て十代は、やっと違和感の正体に気づいた。
瞳の色、緑じゃない。
色のないような不思議な瞳、一番近い色は・・・銀?
その瞳がそっと閉じられる。

「ヨハン!」

次の瞬間、再び瞳は開かれた。
そして

「どうした十代?顔が青いぞ」
緑の双眸、いつものヨハンだった。
「お前、ヨハンだよな」
「当たり前だろ、何言ってんだよ」

どこも、ふだんと変わった様子はない。
だが、さっきのは、
あれは一体なんだったのか。

「ヨハン、あの・・」
「ん?」
「あ、いや。“ビブロスト”って何のことかわかるか?」
「ビブロストは虹の橋のことだ。北欧神話で天界と人間界をつなぐと言われてる。よく知ってたな、そんな言葉」

ビブロスト、虹の橋、虹、虹の竜・・・。
レインボードラゴンには次元をつなぐ力がある。
“ビブロストを呼ぶか?”
さきほどのヨハンの言葉が甦る。
ビブロストとはレインボードラゴンのことなのか。

そしてあれは・・・
あれは誰だったんだ。

                    END

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