東方異聞譚

□東方黒月光
2ページ/39ページ




凪沙が幻想郷に来てから二週間ほど経った。

あいかわらず幻想郷は平和である。

しかし、ここ白玉楼では…。



「凪沙〜お昼ご飯まだ〜?」

食卓からは幽々子の急かす声が聞こえてくる。

「今作ってますからちょっと待ってください!」

「凪沙さん、お皿ここに置いときますね」

「ああ、サンキュー」

棚から食器を持ってきてくれた妖夢に感謝しつつ、鍋に食材がくっつかないようによくかき混ぜる。

後は微妙に味を調整していけば…。


凪沙は白玉楼の料理人としておいて貰っていた。というのもいろいろとあったのである。


〜以下回想〜

時は少々遡り、二週間前…。

こっちの世界で生きていこうと決めたあの日、朝食を食べ終わった俺は突然妖夢に質問された。

「凪沙さん」

「ん、なんだ?」

「これからはここで生活するんですよね?」

「まぁそうなるな。よろしく頼む」

「それはいいんですが…仕事とかはどうするんですか?」

「…あ」

確かに幻想郷と言えど生活していくためには資金が必要である。
しかしこちらに来たばかりの凪沙はどこで、どんな仕事があるのかもわからない。

「そうだと思って、白玉楼に居る間は私の仕事をいくつかやってもらいたいのですが」

「それは助かるけど、基本的に何をするんだ?」

「…逆にお聞きしますが、家の仕事と聞いて出来そうなものは何ですか?」

そこでとっさに答えたのが、「一応料理ぐらいは…」だったためである。

「それでは今日の昼餉(ひるげ)を作ってもらいましょうか」

実際一人暮らしだったため多少は料理の様な物は作ることができる。
だが、人に食べさせられるほど上手いとは凪沙自身思っていなかった。

「でも俺、そんなにうまくはできないぜ?」

そのため一度は断ったのだ。

「じゃあ何か作ってきてもらえる?それで決めましょう」

しかし幽々子がそう言ってきたので仕方なく、凪沙はよく作っていた炒飯を作ってきたのだ。


少女試食中...


「どうですか、幽々子様?」

妖夢は様子を窺うように幽々子に尋ねた。

「たぶん、妖夢のと比べたら全然だめだと思うな」

俺は諦めたような調子で言った。

朝食べた焼き魚は今まで食べた中でかなりの上位に入っていた。
それに比べたら俺の料理なんてよくても下の上くらいだろう。

しかし…

「凪沙」

「はい?」

「あなた、家の料理人にならない?」

「やっぱり…って、えぇ!?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ