キリリク小説
□大妖怪の笑顔にはご注意を
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◆◆◆
目的の物も受け取ったので、すぐに戻って幽香さんに渡そうと私は結構な速度で来た道を引き返していました。
そんなとき。
「…あれ?あそこにいるのは…」
私たちがかくれんぼを始めた霧の湖。そこのど真ん中に広く氷が張っていました。そりゃもう滑っても絶対に穴が開きそうなほどに薄い氷でしたが。
そしてその中心には、なぜか氷の塊がたくさんありました。
私が気になったのはその中の一つ。
(…何をやっているんだろう…わかりきってるけれど)
氷の塊の中にはチルノちゃんがグリコのポーズをとって固まっていました。
おそらく、「このたくさんの塊の中であたしが入った塊を見つけるなんて絶対に出来ないわよ!あたいったらさいきょーね!」的な事を言いながらこうしたのでしょう。
「………」
一番最初に見つけたなどと言うと彼女は絶対に怒るでしょう。
しかたなく私は彼女が入っている氷の塊を
ハンマーでたたき割りました。
「これでよしっと♪」
もちろん割ったのは塊だけで、中にいたチルノちゃんは自分で張った薄い氷を突き破って湖の中へとダイブしていきました。
◆◆◆
「はい、頼まれた肥料持って来ました!」
「あら、御苦労さま。おかげでこの子たちも喜んでいるみたいよ?」
向日葵畑に着いた私は一目散に幽香さんのところへと走りました。(誰だって自分の体の一部を無くしたくはありませんよね?)
そうしてもらって来た袋を確かに渡すと幽香さんはニコリとほほ笑んで向日葵の方を見ました。
「えっ?…うわわわっ!?」
言葉の意味をとらえきれずに視線を追うと、そこには私たちの方を見ているたくさんの向日葵がズラッと並んでいました。
「うふふ♪よかったわね、気に入られて。あと、ここに隠れていた妖精がいたんだけど、あなたのお友達?」
ぽいっ
「あっ!大ちゃん見っけ!」
「ふええ〜!怖かったよ〜!」
幽香さんが放り投げたのは大妖精こと大ちゃんでした。彼女もかくれんぼに参加していたので反射的に指を指して言ったのですが、突然目に涙をためると私に抱きついてきました。
話を聞けば、私が里に行ってからすぐに幽香さんに見つかり、戻ってくる間に色んな事をされそうになった、というのです。
その内容を聞こうとすると、
「えっ?い、いやっ!そんなこと言えなっ…!?」
「あら、別に変なことは何もしてないわよぉ?」
「…」
変な事をされそうになったんですね、わかりm「あら、やっぱり触角を消してもらいたいのかしら?」…私は何があったのか不思議に思いました。
「それじゃあ今度からは気をつけるのよ?」
『は、はぁい…』
帰り際、幽香さんにそう言われた時は私も大ちゃんも苦笑いを浮かべることしかできませんでした。
その後はルーミアちゃんとミスティアを見つけて、時間も夕刻になりそうだったので、今日の所はそれぞれの場所へ帰る事にしました。
…が。
『…あれ、何か忘れてるような…?』
ぷかぁ
『あ…』
湖の中から浮上してきたチルノちゃんは荒ぶる鷹のポーズをとっていました。