東方時流伝
□赤い夢と紅い瞳
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「…はい、終わりましたよ」
「んぅ…ありがと」
まだ意識が覚醒しきらない中、微かに開けた視界に映ったのは自分を見下ろす赤い瞳。
「…あぁ、なんだ夢か」
「大丈夫ですか?何かうなされていたようでしたけど…」
無意識にお礼を言った後に気付けば、先程までのは夢だったのだと理解した。
ちなみに今は彼女に耳掻きをされている内に眠ってしまっていたようだ。
心配そうな声で聞かれたので「心配無いよ」と軽く返せば彼女は安堵の表情を浮かべた。
「どんな夢を見ていたんですか?」
「ん?秘密〜」
「教えてくださいよ〜怖い夢だったら話すと楽になりますよ?」
「だから大丈夫だって。それに…」
「?」
そこまで言いかけて言葉を切った。
言えるだろうか、彼女自身が自分を傷付ける夢など。
「君が夢の中でどんなことをお願いしてきたのか、知りたい?」
「〜〜〜///!い、いえ!やっぱりいいです!!!」
少しニヤけながら面白そうに訊ねると、彼女は見てわかるくらい真っ赤になりながら首をブンブンと横にふった。
それを見てクスリと笑うと「何で笑ってるんですか〜」とあたふたした様子で聞いてきた。
「怖い夢だからこそ君に話したくないんだ。君にまであんな夢を見てもらいたくないからね」
「あ……」
縁側の外、いつもと変わらない竹林を眺めながら静かに言った。
「だから、この話はおしまいと言うことで。いいよね…鈴仙」
「…はい!」
隣に座る彼女に微笑んでもう一度竹林に目を向けた。
その景色はどこか永遠に続くようで。
けれど一瞬の儚さも併せ持っているようだった。