東方異聞譚
□ようこそ幻想郷へ
1ページ/11ページ
「・・・ったく、なんでこんな一般人を巻き込むんだ?」
俺は周りに倒れている男たちを見回すと溜息をついた。
「て・・てめぇは何もんだぁ!?」
正面にいる黒スーツを着た大男が焦った様子で聞いてきた。
「それはこっちが聞きたいです。いきなり襲ってきておいて・・・まったく、何者とはなんですか」
理由ははっきりしている。だがその前にこの状況を説明しないといけないだろう。
まず、俺は平凡な一般市民。コンビニに夜食を買いに行き、帰り道に普段は使わない
ビルとビルの間の近道を使って帰ろうとしたのだ。すると、今は地面と仲良しになっている奴らとばったり遭遇。
ついでに、
「他の組の奴か!」
「かまわねえ!やっちまえ!」
と、いきなり襲われたわけ。
わーい、人権無視ってひどくね?
「とりあえずここを通してくれませんか?せっかく買ったお弁当が冷めちゃいそうなんで」
青年は努めて冷静に言った…つもりだったのだが、
「ふざけんな!ここまでやられておとなしく引き下がれるかい!」
黒スーツの男は懐から小刀を取り出すと青年に向けて威嚇してきた。どうやら相手の気持ちを逆なでしてしまったようだ。
「…しかたない、か」
青年はそう呟くと男に向かって走り出した。
刀の間合いに青年が入ると、男は袈裟掛けに切りつけてきた。
「本当に切るのかよ!」
青年は体を反らして避けると男の後ろに素早く回り込み、首の後ろに手刀を入れた。
男がゆっくりと前に倒れこむ。
「ふぅ・・。さて、帰りますか♪」
青年は髪をかき上げると男たちを避けながら帰路に着いた。
「…中々面白いわね、あの子」
それをビルの屋上から眺めていた一人の人影。
…しかし一瞬でその姿は闇に掻き消えた。