キリリク小説

□夏の溶けない冷たい氷
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紅い屋敷がやけに目につく霧がかった湖。
いつもなら真っ先に冷たさを感じる場所なのだが、例年に比べると特に暑い今年の夏に限っては、ここの寒さも幾分か和らいでしまったようだ。

そんな湖の上で動き回る幾つかの影…いや、良く目を凝らせばあちらこちらに楽しそうに飛びまわる小さな人型を見つける事が出来るだろう。
だが、『妖精』と呼ばれている彼女達でもこの暑さには参っているようで、いつもよりは少しだけ元気がないように見える。
もちろん妖精の中には自分から湖に飛び込んでみたり、木陰で休憩したりと少しでも涼しさを求めようと色々試している姿が見えた。

その中に混じって、木陰で休憩している他の妖精よりも大きな姿があった。

「はぁ〜…チルノちゃん、どこにいったのかなぁ…?」

大妖精は自分の隣で涼んでいる一人の妖精の顔を見た後に溜息をついた。

「どうしたの大ちゃん?」

「あ〜…うん。実はね、ここ最近チルノちゃんの姿を見掛けないんだ」

「え?あのチルノが?」

「うん…この暑さだからここで氷を作って遊んでるんじゃないかって思ってたんだけど、どうやら違ってたみたい」

大妖精はそう言うと湖で遊んでいる妖精達を見た後にまた溜息をついた。
それを聞いていたのか近くに居た妖精が近づいてくると冗談っぽく笑って言う。










「もしかしてチルノったら溶けてるんじゃないの?」

「えっ!?……」

「…な〜んてね!アハハッ、大ちゃんったら慌て過ぎ♪」

「もう、あんまりからかうと大ちゃん怒っちゃうじゃん」

「ごめんごめん!ねぇ、水浴びしてこない?」

「あっ、それ賛成!じゃあ大ちゃん、ちょっと行ってくるね!」

「え、あぁ、うん…」

途中で来た妖精に連れられて隣で涼んでいた妖精が居なくなると、大妖精は不安そうな表情で辺りを見回した。

(さっきの言葉が冗談じゃなくて本当の話だったら…もしこの暑さでチルノちゃんが溶けてたりしたら…!!!)

大妖精の頭の中で考えたくないようなイメージが次々に浮かんでは消えていく。
それに気付かない他の妖精達は水浴びや弾幕ごっこを楽しんでいた。


「……よしっ!」

やがて何かを決めたかのように勢いよく立ちあがると、大妖精は何かを告げると空へと飛び立っていった。
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