キリリク小説
□多世界解釈 〜構築理論〜
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午前10時
空は綺麗に澄み渡り小鳥たちが楽しげに舞う中、少々肌寒い空気の都会から離れ、喧騒とは無縁の様な地方都市。そこの一角。
「…あ〜もう!どんだけ広いのよこの森はっ!」
薄暗い森の中、少々開けた場所から少女の叫びが響き渡った。
【秘封倶楽部改め秘境探検隊!?】
「蓮子センパ〜イ、あんまり叫ぶと余計な体力使っちゃいますよ〜?」
「そうよ蓮子。私たちはサバイバルグッズなんて持ってきてないんだから」
「問題なのはそこじゃないでしょ!」
先程叫んだ少女、蓮子は自分の後ろから冷静にそう告げる二人に珍しく語気を荒げて言葉を返した。
「っていうかメリーも冴月も、もう少し緊張感持とうよ!完璧に迷子なんだよ私達!」
辺りを指で差していき、やがて蓮子は疲れたように落胆した。
三人は最近ネットで噂になっている森の中にいた。
その噂とは
『ある時間になると森の奥から女の子の笑い声が聞こえてくる』という物。
◆◆◆
とある放課後の教室。
オカルト系の雑誌を読んでいた蓮子がたまたまこのページを開いていた。
他に何か…
ねぇ、ちょっとここ行ってみない?
普通ならたんなる自然現象や聞き間違いだと適当にあしらう筈のその噂に、何故かメリーが興味を示したのだ。
え〜、別に至って普通の作り話だと思うんだけどな〜。
いいじゃないですか先輩、メリー先輩が喰い付くなんてきっと学会に発表できるくらいの何かがある筈ですよ!
…いや、流石にそれは…。
しかもそれに便乗するかのように後輩の冴月が賛同した。
それによっていつもとは違いメリーと冴月は楽しそうに、一方の蓮子はほんの少し乗り気ではないクラブ活動となった。
◇◇◇
「そういえばさ、どうしてメリーはこの噂を確かめに来ようとしたの?」
思いっきり叫んだ所為か落ち着きを取り戻した蓮子は、どこかで拾った木の棒で木に目印を付けているメリーにそう聞いた。
だがそれに首を傾げてしまうメリー。
「え?う〜ん…どうしてかしら」
「またいつもの『境界』が見えたんじゃないですか?」
どうやら自分でも良く分からないらしい。
冴月がメリーと同じように木の棒で木に落書きしていると思いついたかのように言う。
「……あぁ、確かにそうだったかも。でも、それだけじゃないのよねぇ…」
「ま、とにかく今は休憩できる場所を探しましょう。歩きっぱなしで足が痛くなってきたわ」
顎に手を当てて何かを考えているメリーの肩にポンと手を置くと、蓮子は箒のような絵を描き始めた冴月の襟をガシッと掴んだ。
「ほら、冴月も何かいいアイデアを考えなさい。でないと最悪野宿しなきゃいけないわよ?」
「ひゃうっ!?わかりましたって!自分で歩けますから〜!」