キリリク小説
□あなたのご注文はどっち?
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日も沈み、月が地面を照らす夜月半。そんな月光を赤へと染めて返すのは『悪魔の住む屋敷』と呼ばれる真紅よりも真っ赤なお屋敷、紅魔館。
そこの地下にある大きな大きな図書館では、静かな外とは裏腹に
「さぁ秋人、どっちにするの!?」
「秋人さん…私を選んでくれますよね…?」
「え、え〜っと、その…ハハハ、困ったなぁ…」
激しさを増す修羅場が展開されていた。
何故こうなったかというと…
時間を巻き戻し、朝。
いつものように眠い目を擦りながら起きてきた『動かない大図書館』ことパチュリー・ノーレッジは図書館からダイニングへと向かっていた。
「う〜…あの魔導書は中々集中力を使うわね。ちょっとでも気を抜いたら魔力が抜き取られるもの…読み終わったらこあに頼んで封印指定してもらわないと」
「おはようございますパチュリー様」
ダイニングへと着くと、妖精メイド達にテキパキと指示を出しながら自身も料理を作っているメイド長の姿があった。
こちらに気付くと挨拶をしてきたので椅子に腰かけ持ってきた本を開きつつ挨拶を返す。
「おはよう咲夜。レミィは?」
「いつものようにぐっすりと眠ってらっしゃいます…あら、こあはどうしたんですか?」
図書館の司書兼パチュリーの専属従者として働いている小悪魔(通称:こあ)
普段ならばパチュリーの傍にぴったりとくっついている筈の彼女の姿が見当たらない。
「あの娘ならちょっと里の方に向かわせたわ。急にどうしても必要な物が出来たからね」
「それなら私どもにおっしゃっていただければいつでも行きましたのに」
「必要になったのが昨日の深夜だったからよ。その時間はレミィの相手で忙しいでしょうに。それにあの娘なら夜でも開いてるお店を結構知ってるから行かせたのよ」
本のページをめくりながらこともなげに言うパチュリー。
だがその内容に疑問を感じた咲夜はふと辺りを見回して尋ね返す。
「それにしては帰ってくるのが遅過ぎませんか…?行かせたのは昨日の深夜なんですよね」
「………」
咲夜の言葉にパチュリーは石の様に固まった。
「………」
「………」
「………」
「…まぁあの娘なら大丈b「さ、咲夜さ〜ん!!!」…?」
バタンッ!
「何かしら中国。門番の仕事は一体どうしたのかしら?」
何処か遠くを見ながらそう言おうとしたパチュリーを遮るかのように勢いよく開かれた扉から入って来たのは紅魔館の門番こと紅美鈴。
慌て過ぎなのか勢いが良過ぎたのかは分からないが、まるで特急列車が急停止したかのように足から白煙を上げつつちょうどよく咲夜の目の前で止まると堰を切ったかのように話しだした。
「だから中国じゃ、と、とにかくそれはこの際いいですから兎に角外を見てください外を!」
「外…?」
いつの間にかナイフを取り出していた咲夜は美鈴の様子に一旦ナイフをしまうと近くにあった窓から外の様子を確認した。
パチュリーも気になったのか、その横から窓の向こうを覗き見た。
そこには……
「秋人さ〜ん…///」
「あぁもう可愛いなぁこあは!」
ギュー
「ひゃうっ!?ち、力強過ぎですよぉ…もぅ」
腕をからませ合い、じゃれあいながら屋敷の方へと向かってくる一組の男女が見えた。