東方時流伝

□天の川の流れ星
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―――何処かへ行っちゃうんですか?

―――心配要らないよ。私は何処にも行かないからね。

―――…本当に?

―――ああ。『   』





「…夢、か」

見慣れた天井を見て私は目が覚めたと言うことに気づいた。

悪夢ではないにしろあまりいい夢ではなかったからだろうか。
私にしては珍しく、何時もより大分早く起きてしまったようだ。

「ふわぁぁぁ…まだ眠い……ぜ…」

この調子ではやろうとしていた実験も手につかないだろう。
睡魔に誘われる様に私はもう一度体を横にすることにした。




◆◆◆

「んぅ……ん?」

再び目が覚めると、部屋に差し込む太陽の光は西側になっていた。

「南無三、寝過したか!」

「お呼びでしょうか?」

「いや呼んでないし、そもそもアンタは何処から入った」

慌てて飛び起きるとベットの横でイスに腰掛けていた人物が不思議そうな顔をして問いかけてきた。
おかしいな…確かに寝る前に鍵の確認はした筈なんだが…?

「普通にドアから入らせていただきましたが?」

「…え?」

キョトンとした顔でそう返してきた知り合いの大魔法使い、聖 白蓮の言葉に私は急いでドアへと向かった。


「………!?なんで、鍵が…外れてるんだ…?」

ドアの前で私は驚いた。
昨日から確かに掛けていた筈の鍵がいつの間にか外されていたのだ。
さっき…というか朝方、一度目が覚めた時もドアを確認してから二度寝したのだ。外れている筈がない。

「?一体どうしたというんですか」

「えっ?ああ、いや何でもないんだ。気にしないでくれ」

心配そうにこちらを見ている白蓮にいつもの調子でそう告げると何処か不安そうな視線だったが納得してくれた。

「それなら良いんですが…」

「さて、じゃあ目覚めの一杯といこうか。アンタも飲むよな?」

「ええ、いただきます」


私は台所に向かうと二人分のカップと紅茶を入れるポッドを用意することにした。
ついでに昨日アリスから作ってもらったスコーンも一緒に出すことにする。

「わぁ、美味しそうですね!」

「だろ?これはアリスが昨日作ってくれたんだ」

「アリス、さん?」

テーブルに置かれたスコーンを見て嬉しそうな顔になった白蓮に、まるで自分の事の様に話すと白蓮は首を傾げた。
ああ、そう言えばアリスをまだ紹介してなかったっけ。

「ああ、私と同じこの森に住んでる魔法使いだぜ。今度紹介してやるよ」

そう言いながらスコーンと紅茶を出して、自分も一口口に含む。
うん、やっぱりお茶はいつ飲んでも美味しい。

「ええ、是非……あっ!」

紅茶を飲んでそう答えた白蓮は突然何かを思い出したかのように声を出した。

「どうした?」

「今日来た理由を思い出しました!」

「なんだ、家に来るのに理由がいるのか?」

「いえ、今日は理由もあってきました」

ニコリとほほ笑んで言う白蓮に私はつられて笑った。

「で?その理由ってのは」

「はい、今日は何の日か知っていますか?」

「今日?確か…七夕か。それがどうしたんだ?」

「実は霊夢さんの神社で七夕のお祭りを開くそうなんです」

「博麗神社で?それはまた突然だな。しかも私は何にも聞いてないぜ」

「私も今朝初めて聞かされました。『今日の夜は神社に集合!』とだけ…」

「あいつらしいぜ」と呟いて私はもう一口紅茶を飲んだ。
そうとなればこれを飲み終わる頃には準備を始めなければいけないだろう。
七夕を祝うなんてそんなにないから何を持っていけばいいかな……?

コトン

「さて、美味しい紅茶と菓子も頂きましたし私もそろそろ準備してきます」

「お、もう行くのか。じゃあまた夜に」

「はい、ではまた」

カップを置いて一息ついた白蓮はそう告げるとガチャリとドアを開けて飛び立っていった。
それを見送った魔理沙はしばらくそのまま外で佇んでいると、夜のお祭りの準備と研究の最終調整のために家の中へと入っていった。
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