東方時流伝
□赤い夢と紅い瞳
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紅い。
目の前が、赤い。
何故?
別に出血している訳じゃない。
どうして?
「アナタは、狂っている」
不意に視界の中に1つの人影が現れる。
それは言葉通り突然“現れた”のだ。
驚いて数歩後ずさる。
人影はゆっくりと歩いてくる。
視界が赤い上に瞳が歪んでいるかのようにぼやけるせいで、目の前の人影が誰なのかを判別することはできない。
だが姿形が自分より少し小さいことから予想するに女性だろうことは想像できた。
人影は徐々に近付いてくる。
正体が判らないからか、自分の頭の中の警報はさっきから鳴り続けている。
やがて目の前まで来た人影は視界一杯にまで顔を近づけた。
『赤く』歪んだ世界に視えたのは一対の『紅い』瞳だった。
その光景を最後に意識が身体から離れ、赤く染まっていた視界も黒く塗り潰されていく…。
「……………」
意識が途切れる寸前、人影が何か言おうとしていたが、それは耳を通り抜け記憶に留められることは無かった。