東方時流伝

□禁じられた遊び
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「ねぇお兄さん、私と遊ぼうよ?」
フランは悪魔の笑みを浮かべながら言った。


「遊びって、何をするんだい?」
フランの笑みを気にする風も無く、凪沙はただ優しく聞いた。
「弾幕ごっこ!」
「危ないよ?怪我するかもしれないし」
「平気平気!怪我なんてすぐに治るから」
凪沙が心配そうに言うと、フランは凪沙の顔を見ながら笑顔で言い、



「オニイサンモ、ヘイキナンデショ?」



「…!!!」
(凪沙、横!!!)
凪沙がフランの様子が豹変したことに驚くと、白蓮の声が頭に響いた。
とっさに上に飛ぶと、凪沙がいた場所を一筋の火炎が薙ぎ払う。
「おしいね〜あと少しだったのに」
「次は外さないよ〜?」
フランが楽しそうに言うと、その横に『もう一人』フランがすっと降り立った。
(…双子?いや違うな…)
「「禁忌『フォーオブアカインド』!」」
「分身か!」
フランがスペルを宣言すると、凪沙は自分の周囲に速度の速い弾幕を展開した。
「きゃあっ!」
「わあっ!」
弾幕が広がっていくと、どこかで驚いた声が二つ聞こえた。
「よく分かったね♪」
「スペル名で大体予想はつくよ。『もう二人』分身がいることくらい」
さっきの声は、恐らく残りの分身が被弾したのだろう。
「じゃあこれは?禁忌『レーヴァテイン』!」
「…ちっ!」
後ろで聞こえたフランの分身がどうなったかに意識を向けていた凪沙は、目の前で分身を消し、カードを取り出したフランに軽く舌打ちすると横へ飛び退いた。
その瞬間、分身が持っていた炎剣と同じ剣をフランが握っており、凪沙の後を追いかけるように大きく横に薙いだ。
(凪沙、蒼牙を!)
(わかってる!!)
腰に差した蒼牙を抜き放つと、迫りくる炎剣―――レーヴァテインと切り結んだ。
「くっ…やっぱり力が半端ねぇ…」
「真っ二つになりたいの?じゃあやってあげる〜!」
最初は均衡を保っていたのだが、五回、十回と、切り結ぶうちに徐々に凪沙の方へと押し返されていく。
「…っ!!!」
そして十三撃目、手に痺れを感じた瞬間、凪沙の手から蒼牙が吹き飛ばされた。
そのままクルクルと空中で回転し、放物線を描きながら蒼牙は床へ突き刺さる。
「痛ったいな〜」
そして凪沙は痺れた手をさすりながら一度距離を置くと、スペルを宣言して拳銃を創りだした。
「創銃『エターナルブレスト』」

パンッ!

凪沙が銃を構えると乾いた音が部屋に響く。
「…?何をしたの?」
フランが首を傾げると、凪沙はクスリと笑った。
「ん?麻酔弾」
「な…にそ、れ…?」
バタンとフランが倒れる。その首元には小さな針が一本刺さっていた。
「衝撃波を受けて何ともない奴に弾幕は効かないでしょ?」
そう言ってダラリと下げた凪沙の左手は真っ赤に染まっていた。
「ま、このまま眠ってくれればいいんだけど」
フランに背を向けた凪沙は、蒼牙を床から引き抜くと扉へと向かった。
(…そうもいかないみたい)
「!!!」
静かに響いた白蓮の声に振り向くと、フランがゆっくりと立ち上がった。
「アハハハハ!タノシイネ!」
(凪沙、危ない!!!)

「カハッ!」
次の瞬間、凪沙が身構えるよりも早く、振りおろされたレーヴァテインの熱風によって壁へ叩きつけられた。
衝撃で凪沙の肺の中の空気が血と混じり、無理矢理外へ押しだされる。
「じゃあねお兄さん♪楽しかったよ?」
「な…何を…」
笑いながら近づいてきたフランは、右手を凪沙の方に突き出すとギュッと握った。
その刹那、





凪沙の体から鮮血が吹き出した。
(凪沙!?)
壁に、床に、凪沙の周囲に有る物へ血が飛び散る。
実体化した白蓮は慌てて駆け寄った。
「大丈夫?ねぇ!返事してよ!!!」
「…オネエサン、ダレ?」
揺り起こそうとするが、何の反応も返さない。白蓮の手にも血が流れ落ちる。
不思議そうに聞いてくるフランの声が遠くに聞こえた。
「ん〜、まぁいっか♪オネエサンモアソボウヨ?」
「……か?」
「?」
小さく呟いた白蓮の言葉が聞き取れず、フランは首を傾げた。
「…ようか?」
「聞こえないよ〜?」










「死んでみようか?」
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