東方時流伝

□魔法の森の何でも屋?
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香霖堂
そこは魔法の森の入口近くにある一軒のお店である。ただここは、店主が妖怪と人間のハーフであり、売っているものも普通の物から魔法の道具、はたまた非売品の物だったりと、かなり変わったお店である。
そしてなんといってもこの店は、地形的な理由かどうかは知らないがとにかく客が来ないのである。
そりゃもうどこかの神社並みに。

そうゆうわけでこの店の店主であり、店番でもある森近 霖之助は、カウンターの椅子にもたれかかりながら一冊の本を読んでいた。

・・・カチャリッ。
「……ん?」
カウンターを挟んで反対側にある扉が開く音がし、霖之助は読んでいた本にしおりを挟むと、手元の棚にそっとしまった。
「いらっしゃい…と、珍しいお客様ですね?」
「どうもこんにちは」
現れた人物に霖之助は思わず驚いた。
そこに立っていたのは“自称”大妖怪であり、本来ならここにいるはずのない妖怪…風見幽香であった。
「今日はどういったものを探しに?」
「傘」
霖之助がたずねると、幽香は短くそう答えた。
その言葉に霖之助は、チラリと幽香の手元を見た。
すると、確かにいつもならそこにあるはずの彼女愛用のふわりとした傘が無かった。
「…なるほどね。ちょっと待っていてください。今あるかどうか見てくるので」
「なるべく早くね?花畑をメディスンに任せてきたのだけれど心配で…」
「わかりました」
メディスンとは、毒を操ることが出来るという自分で動く人形の事だろう。
魔理沙に聞いた話を思い出しながら、霖之助は倉庫へと向かった。


「え〜と、確かこの辺に似たようなものが…あった!」
ガサガサと、袋の中を漁る様な音の後、霖之助のうれしそうな声が聞こえた。
倉庫にある物は一応整理しているつもりなのだが、どうにも非売品にしたものが多すぎたらしく、その中から傘の一本を見つけるのは少し時間がかかってしまった。
「さて、急がないと…」
霖之助は見つけた傘を握り締めると急いでカウンターに向かった。


「すいません!お待たせしまし…た?」
霖之助が急いでカウンターに戻ると、そこに幽香の姿はなく、一枚の書置きが置いてあった。
そこには…
『悪いけれど、やっぱり帰るわ。また今度来るからその傘は預かっててもらえるかしら?』
と書いてあった。
「…みんな自由だな」
霖之助はそう呟くと、持っていた傘をカウンターの横に置いてまたさっきまでのように座って本を読み始めた。


数分後
「あ〜よく寝た!」
「やっと起きたかい魔理沙?しかしなんで自分の家じゃなくて僕の店で寝るんだい?」
茶の間から出てきた黒服の少女に霖之助は素っ気なく尋ねると、
「だって香霖の部屋には珍しいものがたくさんあるだろ?眠たくなるまでそれをいじっていたいからさ!」
「…壊さないでくれよ?」
魔理沙に何を言っても聞かないだろうということはすでに知っていることなので、霖之助はただため息をついた。
 

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