東方時流伝

□メイドと紅茶と吸血鬼と
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「お嬢様、紅茶が入りました」
「ありがとう咲夜」
いつものように流れていく紅魔館の時間。ただ今日はいつもとは少し違っており…
「…あら?今日の紅茶はいつもより美味しいのね」
「ああ、それは里に行った時に白玉楼の庭師の子から頂いたものです。なんでも外の世界の紅茶だとか」
「ふ〜ん…」
この館の主―――レミリア・スカーレットは自分のカップに入っている紅茶をまじまじと眺めてみた。
いつもはまるで血のように…本当に血なのだが、真っ赤な色をしている紅茶なのだが、今日の紅茶はどことなく黄色が混じっているような気がする。
「咲夜、その子はこの紅茶の名前とかは言ってなかった?」
「ええと…確か『シトラスレモンティー』とおっしゃっていましたね」
レミリアの質問に、咲夜はその時の事を思い出しながら話した。
咲夜の言った紅茶の名前に、レミリアは紅茶の匂いを嗅いでみる。
(…確かにどことなくレモンの香りがするわね…)
そういえば味もレモンのような感じがしたかしら?と思い出していると、咲夜がおずおずと尋ねてきた。
「…もしかしてお口に合いませんでしたか?」
「いいえ。ただ外の世界に結構美味しい紅茶があったから少し驚いただけ」
「そうでしたか…」
ホッとしたように胸をなでおろす咲夜。
「あなたも飲みなさい咲夜。なかなか口にする機会なんて無いのだから」
「いいんですか?」
「いいのよ。それに、一人で飲むより誰かと一緒に飲んだ方が美味しいでしょ?」
「お嬢様…!」
微笑みながらレミリアが言うと、咲夜は向かいにあった椅子に座り、自分のカップに紅茶を注いだ。
そして一口紅茶を口にする。
「…美味しい」
「そうでしょう?」

そうして、二人はいつもよりも少しだけ優雅な一時を過ごしていた。

「…そういえば」
「はい?」
紅茶を飲み終わり、ティーカップを片付けている咲夜にレミリアが聞いてみる。
「なんで冥界に外の物があったのかしら?」
「あ…そういえばそうですねぇ」
片付けの手を止め、気付いた風に思案する咲夜。
「それに簡単に誰かにあげるなんて…何をたくらんでいるのかしらあの幽霊は?」
レミリアは、死霊を操れる少女を思い出して、考え込むように両手を組み、その上に顎を乗せる。
「ん〜わかんないわ」
(…ただ単純におすそ分けしただけでは?)
片付けたカップやソーサーを給仕台に載せ、咲夜は「あ〜う〜」と考え込んでいる自分の主にこっそり萌えつつ部屋を後にした。
 

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