東方時流伝
□クリスマスにおひとついかが?
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「う〜寒っ!なんだよこの寒さは…さっさと帰ってあったまろ」
自宅への帰路に着く一人の男性。厚手のコートにマフラー、モフモフの手袋という重装備にかかわらず、男性はあまりの寒さに身を震わせていた。
というのも、今年の冬は異常とも呼べるほどの寒気なので、去年は重装備と呼べたこの服装も今年に限っては普段着といって良いレベルになってしまっていた。
道行く他の人々を観察してみると、中にはコートを二枚も重ねている者や雪山に登山でも行くのではないかという格好も人も居た。
そんな中を男性はいつもよりも早足で駆けて行った。
自宅に着いた男性は、中に入る前に服についた大量の雪を払う。念のため身体を震わせて残った雪もしっかり落とすとガチャリとドアノブを回して扉を開けた。
「ただいま」
「おかえりなさい、あなた」
「…そ、その格好は…!?」
「…似合うかしら///」
扉を開けた先には、冬の代名詞で紅白の衣装……簡潔にいえば
ミニスカサンタの格好をしたパルシィがモジモジと恥ずかしそうに立っていた。
「しかし何だってそんな…」
「あなたなら喜んでくれると思って…嫌だった?」
「え…いや…その…」
「(ボソボソ…)」
「……ん?」
男性が口ごもると途端にパルシィは俯いてしまった。
機嫌を損ねてしまったかと慌てて男性が駆け寄ると、不穏な空気を漂わせながら小さく何か呟いていた。
「もしかしてもう他の娘と…あぁ妬ましい…ねたましいわ…」
「ちょ、ちょっとパルシィ!勘違いだから!それは絶対にないから!」
光のない眼でどこからか五寸釘と金槌を取り出したパルシィを見て、男性は目にとまらぬ速さでそれらを奪い取ると自分が入って来た玄関からそれらを投げ捨てた。
そうして肩をしっかり掴むと視線を合わせ、気持ちのこもった瞳で考えを否定する。
「…本当?」
男性の言葉にパルシィは涙目に上目づかいという二重コンボを繰り広げつつ尋ね返す。
「ああ、本当さ!他のどの女の子よりもサンタ姿のパルシィの方がとっても可愛いよ!」
「そ、そう…?///」
気恥ずかしさからか頬を赤く染めて俯く。
「あぁ!だから、さ……」
「えっ?…んみうっ!?」
そんなパルシィの顎を持ち上げた男性は、キョトンとしている口元を自分の唇で塞いだ。
「…んっ!はぁ……」
不意打ちに驚いた彼女だったが、男性から唇を離すとトロンとした表情で見つめ返してくる。
「ねぇサンタさん、クリスマスプレゼントは無いのかな〜?」
「え…?」
「サンタ衣装を着てるなら、と・う・ぜ・んプレゼントも準備してくれてますよね〜?」
「う…うぅ。そんなの準備してないわよぉ…」
「え〜?全然聞こえないよ〜(ニヤニヤ)」
「そんな嬉しそうに聞かないでよぉ…本当に妬ましいわ…」
「妬ましい」という彼女独特の口癖を言ってはいるが、普段の様な恨めしそうに睨んでくるのとは違い、今男性の目の前に居るパルシィは、恥ずかしそうに顔を背けながらチラチラとこちらの様子を窺ってきていた。
「………」
「………」
「・・・・・・・」
「・・・・・」
「…え、えっとぉ」
「うん?」
「プレゼントは……私を…どう、ぞ…?」