小説 【至高ルーチン】

□直島「ベネッセアートサイト直島」
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早朝の、まだ海から太陽が顔を出さない薄暗い中で、
咲子さんは海に向かって座っていた。

桟橋の様に海に突き出した場所に、
水玉模様の黄色いカボチャのオブジェがある。

草間弥生作の「南瓜」と向かい合い、
まるでオブジェと対の作品であるかのように背中を丸めて、
海風の穏やかな凛とした空気の中に、
咲子さんはいた。

「…おはよう、寺森。眠れた?」

咲子さんは煙草をくわえ、手にコーヒーの缶を持って、
俺に気が付くと、南瓜に向かって三角座りしたまま、
首だけをこちらに向ける。

まだ空は白く、淡い紫色と白が空にグラデーションを作っている。

「眠れましたよ、おかげさまで」

何も考えずにとりあえずこの島に来た俺は泊まるところも確保していなかったので、ツインの部屋をとっていた咲子さんの部屋に転がり込ませてもらった。
この仕事をしていると、性別年齢関係なく雑魚寝することも多々あり、もう俺達はそんなことにこだわるような関係でもない。

まぁ、旦那である社長には悪いことをしたような気もするが。
咲子さんは、「どうせ史希さんは樋口さんと同じ部屋とってんだから」と気にしていない。
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