BL長編小説 【美しい男】

□美しい、嘘。
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確信犯やねん、俺。



本格的にリブラはアーティストとして活動を始めた。
慣れないことが多くて精神的ヘロヘロんなってるけど、そこそこ面白い。
何よりも歌を歌ってられることがよかった。



しかし、歌ってりゃいいってモンでもなくて。
ノイズがバンバン仕組んでいくプロモーション活動をしなきゃならない。

俺にはそれが苦痛で。



「広田くん、次は雑誌のインタビュー取材ね」
「…はーい」

移動中のキャラバンの中でマネージャーの柘植が伝える。

ああ、憂鬱やな。

初めて会う大人にあれやこれや聞かれたり写真とられたりするん、苦手や。

「由樹だけ?」

隣に座ってた謙一が、柘植に言う。

「そ。その間、みんなは撮影ね。交代でインタビュー取材するから」

あ、じゃあ俺一人なんや。
なおさら憂鬱やな。



向こうはプロやねん。だから、いろいろ気を遣わせへんように取材はしてくれる。

でも、俺は無理なん。

隣をチラッと見る。
謙一は俺の視線に気づいて、ちょっと困った顔をした。



リブラがデビューして、俺はやたらと謙一に甘えるようになった。

人と付き合いが得意じゃない俺を、リーダーだからってことも手伝って、謙一は甘やかした。



俺は確信犯や。



そうやって頼れば謙一は俺に優しくしてくれるってわかったから。
うまく利用して、俺のそばに居させてる。

…きっと、しんどいやろな。

面倒みなあかんの、俺だけと違うし。



でも。
もう結構限界やねん。



好きすぎるわ。



仕事に没頭したら、こんな感情はなくなるって信じてたのに。

デビューしたことで一緒にいる時間が増えすぎてなおさら意識するようになった。



もう、精神的に参ってる、正直。

そやのに謙一に甘える俺は卑怯者である以外に何者でもない。



「…一人でも、大丈夫やんな?」

謙一が、みんなに聞こえんように耳打ちしてくる。

「当たり前やん」

なにいうてん、って気丈なふりして。

嘘やんか、こんなん。



そばに、いてほしい。



おまえに気持ち伝えられへん代わりに、俺は仕事でおまえを束縛してる。



卑怯やねん。






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