企画物 【ラストダンス 番外編】

□客観的に見た、咲子さん。
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タバコの煙を深く深く吸い込んで、
ちょっと口あけてもそこからは少ししか煙がこぼれなくて、
次の深呼吸でふぅーと吐き出されるその紫煙を、俺はじっと見ていた。


咲子は、俺の視線に気づくこともなく、窓の外をぼんやり眺めて、タバコを少しずつ縮める作業に没頭している。
いや、無意識で、吸ってるだけにすぎやしないが。




・・・よく考えれば、男前になったもんで。

高校時代に初めて会ったときは、ただの変人だと思っていたのに。



今じゃ演劇界だけじゃなくて、芸能業界にちゃんと名前が通る、そこそこステイタスをもった、「アーティスト」。


黒のパンツスーツが似合って、長い髪もゆらゆら。

全体的に、男前。

てゆうか、女前。





「・・・見てても何も出ないわよ、寺森」




気づかれてましたか。




「・・・咲子さんを見つめていたわけじゃないですよ」
「よっく言う。惚れてるもんね、寺森は私に」


きひひ、と笑うのは、あのころから全然変わってなくて。

俺はそれで少しだけ安堵できる。



だって、いつまでたっても、そうやって俺たちに元気に与えてくれるから。


いつか、手の届かないところに行ってしまうような影を背中に背負っていながら。




「ナニ、考えてたんです?」

ぼんやり窓の外なんて見ちゃって。

「んー、・・・今晩のおかず」
「・・・絶対うそでしょ」

だって、おまえ、夕飯なんて作んないじゃん。
旦那じゃん、作ってるの。


「どうせ芝居のことでしょ」
「いや、今晩ちゃんと史希さん帰ってくるかな、と思って」



…笑えねぇよ、それ。







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