BL短編小説 【ラストダンス 2】

□こんなことが普通なんだ。
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ピピピピピピピピピピピピピピピピ…



…うるせぇ。



まどろみの中で、目覚ましエンドレス。
俺は朝に弱い。
過酷なモデル界にもまれもまれて遅刻はさすがにしなくなったが(遅刻したらクビだから)、それでも朝は弱い。



ピピピピ…ピ。



あ、止まった。
よしよしもう一眠り…。


「…いい加減、起きなよ…梅崎さん…」

軽くつねられた頬と、上からそそがれる声と。

「…んー」
「んーじゃないよ。今日、台本の読み合わせなんでしょ、遅れたら咲子さんに怒られるよ」
「んー?」

ダメだ。目ぇあかねぇ。

「ん、駄犬…」
「朝から犬扱いかよ」

ちょっと笑った声が脳内に響く。

「…ふふ」
「なぁに、寝ながら笑って、梅崎さん」

だって気持ちいいんだもんよ。
ふわふわしたまどろみと、おまえの声が。

栄一郎。

手探りで手を伸ばせば、そこに暖かい手があって。

「ん…」
「おはよーのちゅーが必要?」

あら、可愛いこと言うなぁ、駄犬のくせに。

「…いる…」
「じゃあ起きて」
「ん」

目を開ければ、すでにシャワーを浴びて髪の毛を濡らした栄一郎。

「あ、ほんとに起きた」
「起きるぜ、そりゃあな」

なんせ俺様、おまえが好きだからな。

「おはよーのちゅーは?」
「…。」
「…無視かよ」
「…言ってみただけだったんですけどね…ほんとに起きると思わなくて」
「照れんなって」
「ぎゃ、引きずり込まないでよ!」
「いいじゃねぇか〜恋人同士じゃねぇか〜」
「キャラ違いすぎ、梅崎さん!」
「うるせぇ、駄犬」
「犬扱い禁止!」

二人でけらけら笑って、腕と足を絡ませて。

栄一郎はちょっと照れくさそうに上からちょんと鼻をくっつけて。

ちゅ。

って。

照れんなよ。
可愛いから。



「こんなことが普通になったらぼく、もう無理だよ…」

赤面して顔を背ける栄一郎。

濡れて冷たい髪が俺の頬を濡らして。
それすら愛おしいなんて。


俺はどっかおかしくなったのかもしれない。
おまえとこうなってから。

加速度をつけて、おまえが好きでたまらないって思うんだから。

「そのうち普通になるさ」

今は二人で暮らし始めたことも、単純に新鮮なだけで。

けれど、どれだけ普通になっても、色あせたりさせねぇから。

おまえが照れくさくなるくらい愛してやるから。

「覚悟しとけよ」
「…ナニに覚悟?」
「ふふふ、秘密」
「なぁに、いやですよ、その邪な笑い」
「大胆不敵と言え」
「あーはいはい」
「あ、こら、離れるな」
「もーいい加減起きてくださいねー」

寝起きで体に力の入らない俺から簡単に離れると、栄一郎は笑いながら寝室を出て行った。

開いた扉からはもうすぐコーヒーのいい香りが広がってくるだろう。


お互いがツアーだ公演だとなれば、空気扱いで、家に帰ってこないことは当たり前で。

時々エアーポケットみたいにできた平穏な朝は、こうして新婚気分。


…意外にいいもんじゃん。


なぁ、栄一郎。
愛してるって、こういう朝に言うモンだろ?

















「…やっぱ二度寝してるし…。起きろ! バカ崎!」
「…ん…むにゃ」

























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