BL短編小説 【ラストダンス 2】
□新年会
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こんにちわ、藤倉咲子です。
毎日適当に生きてます。
今日は私の劇団にいる変な人たちを紹介しましょう。
てゆうか、いま新年会の真っ最中なんですが、
場所がオフィスなもんで、
そこへ酒浸りときたもんなんで、
私の周囲はカオスと化してまして…。
私の隣に座っている、売れっ子バンドの恩田明人だけがシラフです。
「アキちゃん、大丈夫?」
「は? 俺は見ての通り酔ってないけど」
「うん、じゃなくて、弥生」
「ああ…」
アキちゃんは目を細めて恋人を見ます。
視線の先には弥生ちゃん。
彼は私の腹違いの弟で、ホスト顔です。
彼は去年から記憶をなくしていますが、今は何故かみんなと打ち解け、あげく悪のりしだしたメンバーに唇を奪われてますが、
ケラケラと笑ってます。
…誰だ、未成年に酒を飲ませたのは。
咲子さんは知りませんよ。
「…帰ったら、お仕置きだな…」
アキちゃんの呟きが本気すぎて、私は無視することにしました。
…こわっ!
お仕置きって何かしら〜ワクワクしちゃう。
…嘘です。
可愛い弟がアキちゃんにヤラれる姿は未だに想像できません。
てゆうかしたくありません。
「咲子さん、何を遠巻きに見てるんですか?」
冷静な面もちですが、若干酔いかけなのは寺森くん。
「せやでー咲子ー飲め飲めー!」
アルハラ(アルコールハラスメント)を平気でしてくるのは万年関西弁の陸吾。
吉良陸吾だなんて、芸名のような男ですが、戸籍のまんまの名前です。
彼に煽られて飲む寺森が訛り始めると危険ですので…離れることとしましょう。
ビバ・賢明な判断な咲子さん。自画自賛です。
「奈良原くん、ほら、僕は2杯目だよ?」
「いや、俺は3杯目ですから、社長」
「なら、僕は4杯目だ」
「じゃ…っ、俺、もう1杯飲むもんね!」
飲むもんね、じゃねぇよ、奈良原。
史希さんが飲んでるのは焼酎の水割りじゃなくてミネラルウォーターだから!
しかし火のついた奈良原は騙されて焼酎の水割りを飲み干してます。
4杯目じゃなくて6杯目だよ。死ぬなよ。
旦那は相変わらず変人なので、嫁の私にも何がしたいのか未だにわかりません。
お水飲みすぎでお腹ちゃぷちゃぷしちゃうわよ?
奈良原が酔いにまかせて樋口さんのことでもノロケようなら私の立場が微妙すぎるので(史希さんが嫉妬しちゃうのを目の当たりにするから)。
私は回避することにいたします。
「咲子さ〜ん、咲子さんてば〜」
犬がすりよって来ました…。
「…ウザイわね、吾妻」
「ひどい〜」
「ひどくない」
「やだ〜」
「やだじゃない、駄犬、博文に相手してもらえばいいじゃない」
「だって〜」
と吾妻が目を向けた先にはいつのまにか陸吾と一緒に豪快に笑ってる梅崎博文が、相変わらず奇抜な格好と髪型で酒を煽っています。
万年モデルの信州出身海外顔め。
「いや、ちゃうやろ〜梅崎はどっちかって言えば関西人やろ〜」
陸吾がゲラゲラ笑えば、
「まぁ、せやけど信州から拉致られて関西に来た梅崎もたいがいやな〜」
と寺森。
危険です! 関西弁バージョンになってます!
「いや、まぁ、しゃぁないやろ。咲子に誘われたんに、断れん。自ら来たんやけん、やらなと思て。愛しとうからな、芝居も」
危険です! 梅崎博文までもが関西弁です!
てゆうかそれ、中国四国地方の方言もまじってるし。
そういや私は長い間関西弁をしゃべってません。
理由?
なんとなく。
「吾妻〜ツマミとって〜って!」
「声がデカいよ、高奈は!」
「地声なん! しゃぁないやろ!」
「なんで関西弁になってんの! 高奈は関東出身やろ!」
…私から言わせれば、吾妻も関西弁になってるわよ、ってところです。
ああ、京都出身だったな、駄犬は。
「咲子〜こっちで飲もうよ〜えへへ〜」
桐島さん、目がすわってるから嫌です。
「あ、咲子、なに無視しよん?」
…あなた奈良出身なのに、なんで広島方面訛りなのよ…桐島さんたら。
「…カオス、だな」
呟いたアキちゃんが一番マトモですよ。
「でも、好きな癖に、こういうの」
少し笑って缶ビールを傾けたアキちゃん。
よくわかってる。
「親戚中が集まる正月みたいだな」
うん。
それが好きで。
だからまぁ、嫌いじゃないんだよね。
ただ問題は。
「なんでうちの人たちは酔うと関西よりの言葉になるのかしら…」
謎です。