京極堂シリーズ
□ガムテープ
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離れたくても
離れられないから
一緒にいたいんだ。
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「京極堂」
そう言って中禅寺へ向けて差し出された関口の掌。
片手を突き出されたこの状況なら、大抵の人間は握手を求められたと思う。
中禅寺だってそうだ。
しかし、その握手を求めている相手が関口なのだから分からない。
関口は普段、躯の接触を最も厭う男だ。
「君、何だこの手は」
「握手さ。知ってるだろ?」
平然と。
当たり前のように。
「君にとって握手のような身体の接触は、一種の性行為に近い、と以前聞いたと思うが?」
「何を今更。あれだけ好き放題に抱いておいて、握手はできないって言うのかい?」
珍しく淀みなく喋る。
関口が饒舌であるときは、大抵よくない予感が付き纏う。
突き出された手は引かない。
こうなった関口は思うとおりになるまで動かないし、終いには拗ねる。
拗ねてからでは折れても遅い。
その上、要求はエスカレートすることが多い。
この上なく質の悪い駄々っ子。
仕方なく中禅寺は、差し出された手を握った。
にこり、と関口が微笑む。
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