記念もの
□喧嘩するほど?
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――何てことだ。
私はあの榎木津に気を遣わせ、さらにその意図を汲めずに一人怒っていたのだ。
第三者である京極堂が直ぐに気付いたことに、私は気付けずに好意をないがしろにしていた。
謝ろう。
そう決心して探偵社を訪れたはいいが、愚鈍な私はうまく切り出せず、不機嫌な探偵と睨み合いを続けていた。
「榎さん」
「何」
「さっきは僕、その…勝手に怒って出ていったりして、すまなかった」
精一杯気持ちを込めたつもりだ。
榎木津はまだ拗ねた様子だが、こうなってしまってはもう成るに任せるしかない。
「じゃぁ、関が僕にチューしてくれたら許す」
私は固まった。
確かに、私が悪い。
…なのだが、何となく、理不尽な気がした。
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